レバノン南部、イスラエル攻撃で9万人避難=住民「未来見えない」 2024年06月16日 14時23分
【ベイルート時事】イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの交戦の影響で、レバノン南部の住民約9万4000人が避難生活を送っている。昨年10月のイスラエルとパレスチナのイスラム組織ハマスの衝突を機に交戦が激化してから8カ月以上が経過。イスラエルの攻撃で住居も職も失った住民は「未来が見えない」と途方に暮れている。
「家にいるだけで戦闘員だと見なされて殺される」。イスラエルから数キロの町ヒアムで家具職人として暮らしていたハッサン・アイヤシュさん(50)は、昨年10月末に妻と息子3人と首都ベイルート郊外に退避。兄弟が所有するアパートの一室に身を寄せている。
イスラエル軍はヒズボラ戦闘員や武器庫を標的にしていると主張し、レバノン南部の集落を空爆。ヒアムはたびたび攻撃を受け、町は壊滅状態に。アイヤシュさんの自宅も4月に空爆を受け、跡形もなくなった。
ベイルートで職を探しているが、見つからない。2020年にデフォルト(債務不履行)に陥ったレバノン政府は「支援する」と言うだけで具体的な対策はなく、ヒズボラの援助は犠牲者家族が対象で避難民は含まれないという。
貯金を切り崩し兄弟に頼る生活が続いている。アイヤシュさんは「帰る場所も仕事もない。どうすればいいのか、もう分からない」と嘆いた。
ヒアムで、友人や隣人は生業とは別にヒズボラメンバーとして活動していた。イスラエル軍の侵入を抑止しているとして、ヒズボラは尊敬の対象だという。
イスラエルに近い集落では、あくまで自衛目的だが、数年前から住民が武器の所持を開始。アイヤシュさんもAK47自動小銃を手に入れた。イスラエル軍がレバノン領内に入れば、ヒズボラかどうか関係なく、「皆がイスラエルと戦う」と強調した。