フランス大統領、「最大のギャンブル」=極右阻止へ解散・総選挙―野党勝利なら混乱も 2024年06月10日 20時11分

マクロン仏大統領=9日、北部ルトゥケ(AFP時事)
マクロン仏大統領=9日、北部ルトゥケ(AFP時事)

 【パリ時事】フランスのマクロン大統領(46)が9日、国民議会(下院、定数577)の解散・総選挙に踏み切った。欧州連合(EU)欧州議会選で圧勝した極右野党・国民連合が国政でも攻勢を強めるのは必至で、機先を制した形だ。ただ、月末の投票に向けた短期決戦で流れが変わるかは疑問。マクロン氏の政治生命を懸けた「最大のギャンブル」(AFP通信)になるとみられている。
 「屈するつもりはない」。マクロン氏は9日のテレビ演説で国民連合との対決姿勢を鮮明にし、予想外の解散・総選挙を宣言した。これ以上の極右の躍進を阻止し、活路を開くための苦渋の決断だが、与党が重要な選挙に大敗した日の解散表明は奇策に近い。これを受け、10日の欧州市場で仏主要株価指数が一時2%超安と急落した。
 野党の選挙準備が整わないうちに意表を突き、傷口を最小限にとどめる狙いがあった可能性はある。しかし、準備不足は与党も同じ。仏紙によると、与党幹部は欧州議会選に敗れても「7月26日開幕のパリ五輪前に大きな動きはない」と踏んでいた。突然の解散で与党内にも衝撃が走っている。
 隣国スペインでは昨年5月、地方選での与党大敗の直後、レームダック(死に体)化を懸念したサンチェス首相が議会を解散した。投票まで約2カ月の時間的余裕を生かし、総選挙では与党が善戦。サンチェス氏は同年11月に再任された。
 一方、仏下院選は2回投票制で、第1回が今月30日、第2回は7月7日に決まった。最初の投票まで3週間しかなく、国民連合が勢いを保っても不思議ではない。国民連合が勝利すれば、バルデラ党首(28)がマクロン氏の下で首相を務める「コアビタシオン(共存)」政権が誕生しかねず、政治の混乱・停滞は避けられない。
 マクロン氏は2017、22年の大統領選で、いずれも一騎打ちの決選投票の末に国民連合のルペン氏を下した。その成功体験から、今回も「反極右」勢力の結集による勝利を目指しているという指摘がある。テレビ演説でマクロン氏は「仏国民は最も公正な選択ができると信じている」と有権者に訴えた。 

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