追悼警戒、厳戒の北京=習政権「悲劇」封印―天安門事件35年・中国 2024年06月04日 19時41分
【北京時事】中国で学生らの民主化運動が武力弾圧された1989年の天安門事件から、4日で35年を迎えた。当局は追悼や政権批判の動きを警戒し、警備を厳格化。遺族らが真相究明を求める中、習近平政権は事件を正当化し、「悲劇」の封印を図っている。
4日、事件の現場となった天安門広場周辺は普段より厳重な警備が敷かれた。天安門の楼上は終日閉鎖。広場に通じる道では身分証の確認が行われ、「臨時の外交活動があり、通れない。詳細は職務上の秘密だ」として記者の通行が許可されなかった。多くの犠牲者が出た地下鉄駅の周辺でも3日夜、私服姿の要員が多数配置され、通行人に目を光らせた。
中国の人権問題を扱うサイト「維権網」によれば、事件の遺族らは4日朝、犠牲者8人が眠る北京市郊外の万安墓地を訪れ、追悼した。「歴史の悲劇を繰り返してはならない」として真相究明を訴える声明を発表し、犠牲者らが求めた「正義」の実現を願った。墓参は当局の監視下で行われたもようで、周辺では複数の警備要員が警戒に当たった。
歴代政権は事件を「政治風波(騒動)」「動乱」と呼び、弾圧を正当化してきた。習政権もこの立場を維持した上で、言論統制を一層強化。墓参した遺族は声明で「当局による盗聴、監視、警告、脅迫、付きまといを経験してきた」と記した。
官製メディアが事件について報じることはほとんどない。35年の節目となったこの日、国営テレビは中国の無人探査機が月の裏側で土壌試料を採取したニュースを繰り返し放映し、習政権が目指す「宇宙強国」への歩みを強調した。事件を伝えたNHK海外テレビ放送のニュース番組は4日夜、カラーバーと「信号異常」を示す画面に切り替わり、4分間にわたり遮断された。