続く経済拡大、世界で台頭=世俗主義後退指摘も―インド 2024年06月04日 14時33分

 【ニューデリー時事】インドはモディ政権発足後の10年間で高い経済成長を達成し、新興・途上国「グローバルサウス」の代表格として国際社会で存在感を高めた。一方、内政面では「強権化」への懸念に加えて、ヒンズー至上主義的な性格を強め、国是とされてきた「世俗主義」が後退したとも指摘されている。
 インド人民党(BJP)が政権を奪回した2014年に世界10位前後だった経済規模は、現在5位にまで膨らんだ。14億人超という世界最大の人口の旺盛な内需に支えられ、政府が発表した23年度の成長率は8.2%と高水準を維持。25年にも名目GDP(国内総生産)で、4位の日本を抜くとの予測もある。
 モディ首相は、次の5年間でインドが米国、中国に次ぐ「世界3位の経済大国になる」と、折に触れ訴えてきた。
 国力増大を背景に、近年は新興国のリーダーとして振る舞うようにもなった。ロシアとの伝統的な友好関係を維持しつつ、日米豪印の枠組み「クアッド」の一角を占めるなど、西側諸国も安全保障パートナーとして重視。「大国インド」を導くモディ氏の強い指導者としてのイメージが、与党の支持につながっている側面も大きい。
 一方、人口の約8割を占めるヒンズー教徒のみを重視するような政策を次々に実行。ヒンズー教徒と少数派のイスラム教徒の間で暴動や襲撃も起きており、宗教間の分断は深まるばかりだ。BJPの支持母体であるヒンズー至上主義団体・民族義勇団(RSS)出身のモディ氏は、選挙戦でイスラム教徒を「侵入者」と表現して波紋を広げた。
 また、捜査機関を使って政敵や政権に批判的な記者に圧力をかけるなど、強権化が進んでいるとの指摘も。米国に滞在するシーク教徒の男性の暗殺を計画するなど、インドの情報機関が友好国で暗躍しているとも報じられた。「世界最大の民主主義国」の行方には、内外から懸念と注目が集まっている。 

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