経済前面、包囲網緩和狙う=中国、「米抜き」枠組み重視―日中韓首脳会談 2024年05月27日 17時38分

27日、ソウルで共同記者発表に臨む中国の李強首相(代表撮影・時事)
27日、ソウルで共同記者発表に臨む中国の李強首相(代表撮影・時事)

 【ソウル時事】中国の李強首相は日韓首脳との会談で、経済連携やサプライチェーン(供給網)強化に向けた協力の重要性を前面に掲げ、米国が構築を進める「対中包囲網」の緩和を狙った。台湾問題などで相違を残しつつも、「米抜き」の枠組みを重視する姿勢を見せた。
 「中韓の経済協力は両国国民に確かな利益をもたらした」「中日の経済関係は切り離せない」。李氏は26日、韓国の尹錫悦大統領、岸田文雄首相と個別に会談し、日韓両国と中国の実利的つながりを強調した。
 中国と日韓の間には、習近平政権が「核心的利益の中の核心」と位置付ける台湾問題、東・南シナ海問題、対北朝鮮政策など、主に安全保障分野で溝が横たわる。日韓が米国と連携を深めているのもこのためだ。
 これに対し、経済と人的交流は、日中韓が最低限折り合える分野だ。李氏の発言は、日韓が最大の貿易相手国である中国と経済的に手を切れない実態を見通したものと言える。
 米国は経済面でも対中半導体規制を強化するよう日韓に求めているが、李氏は韓国で国内産業保護の観点から規制に反対する声が根強いことを利用し、包囲網に風穴を開けようと努めた。26日の尹氏との会談後には、時間を割いて半導体大手・サムスン電子会長と会い、対中投資を歓迎する意向を示した。
 安保面では、将来の変化を見越した戦略を描いているもようだ。11月の米大統領選で同盟軽視の傾向が強いトランプ前大統領が返り咲けば、日韓がバイデン現政権と築いてきた安保協力は大幅に後退する可能性もある。李氏は日中韓首脳会談で「韓日と共に地域の安定を維持したい」と語り、東アジアでの日中韓連携の重要性を訴えた。「大統領選後」を見据えた布石だ。
 中国共産党機関紙系の環球時報は27日の社説で、米国が「中国、ロシア、北朝鮮VS米、日、韓」という「陣営対立の物語」を宣伝して日中韓協力を妨げていると主張した。米国を「悪者」に仕立て、日韓に「過度の親米」姿勢の見直しを促す論陣を張った。 

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