プーチン氏、ハリコフ制圧「計画なし」=「失えない」とウクライナ大統領―ロシアの国境侵攻1週間 2024年05月17日 19時35分

16日、ウクライナ北東部ハリコフで会議に出席するゼレンスキー大統領(大統領府提供・EPA時事)
16日、ウクライナ北東部ハリコフで会議に出席するゼレンスキー大統領(大統領府提供・EPA時事)

 ウクライナ北東部ハリコフ州の国境地帯でロシア軍が新たな地上侵攻に出て17日で1週間となった。ロシア側はこれまでに12集落を掌握したと発表。プーチン大統領は同日、州都ハリコフ市まで制圧する計画は「現時点でない」と主張したが、将来的に同市に攻め入るシナリオを排除しておらず、緊迫した情勢が続いている。
 プーチン氏は訪問先の中国東北部ハルビンで記者団の質問に答えた。国境地帯での作戦については、ハリコフ州に接するロシア西部ベルゴロド州にウクライナ軍が砲撃するのを阻止するためと説明。「緩衝地帯」創設が目的だと述べた。
 一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ハリコフ市を失うわけにはいかない」と表明しており、州都への進軍という最悪の事態にも備え、米欧への支援呼び掛けを強めている。
 「世界(西側諸国)のせいだ。プーチン氏にチャンスを与えた」。ゼレンスキー氏は16日の米ABCテレビのインタビューで、米国で支援関連法の成立が遅れたことなどが、ロシアの進軍を招いたと恨み節を漏らした。ハリコフ市占領を阻止するには米国製の地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」システムが二つ必要だと強調。防空兵器を中心に追加供与を要求した。
 背景にあるのは、仮にロシアとの停戦交渉に進んだ場合、前線の主導権を奪われたままでは不利な条件をのまされかねないという懸念だ。国境地帯は2022年2月の侵攻開始後に一時占領されたが、同年春の停戦交渉時でも、国内第2の都市ハリコフは死守していた。ここを失えば、風向きは一気に変わる。
 さらに、ウクライナ軍がハリコフ州に部隊を振り向けたことで、東部ドネツク州の高台の要衝チャソフヤルの防衛がやや手薄になったという情報もある。ロシア軍がハリコフ州に隣接する北東部スムイ州にも地上侵攻すれば、ゼレンスキー氏は6月にスイスで開催する「平和サミット」どころではなくなる。
 こうした状況を踏まえ、優位な立場を築こうとしているのがプーチン氏だ。通算5期目就任後の初外遊として16、17両日に友好国・中国を訪問。首脳会談後、習近平国家主席は「中ロはウクライナ危機の政治的解決が正しいという認識だ」と発言した。ウクライナに譲歩を迫るロシアの立場を中国が容認した可能性がある。 

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