母国に「双葉」売り込み=観光で交流人口拡大を―インド人留学生ら奮闘 2024年03月07日 14時42分

インドの首都ニューデリー郊外で開かれた観光博覧会に参加する(左から)山根辰洋さん、トリシット・バネルジーさん、スワスティカ・ジャジュさん=2月23日
インドの首都ニューデリー郊外で開かれた観光博覧会に参加する(左から)山根辰洋さん、トリシット・バネルジーさん、スワスティカ・ジャジュさん=2月23日

 【ニューデリー時事】東京電力福島第1原発事故でいまだ多くの住民が避難している福島県双葉町の再生を目指し、インド出身の若者が奮闘している。観光を通じて交流人口を拡大しようと、母国に同町を売り込んでいる。
 「避難指示を受けていたコミュニティーが今、故郷に戻ろうとしている」。2月下旬、首都ニューデリー郊外で開かれた観光博覧会。日本のブースで熱心に双葉町や福島県の現状を説明し、その魅力を訴える男女の姿があった。福島県浪江町に住むスワスティカ・ジャジュさん(27)と、仙台市在住のトリシット・バネルジーさん(26)だ。
 2人は国費留学生として、それぞれ来日。ジャジュさんは東北大学大学院で学ぶ傍ら、インターンとして双葉町で観光事業に取り組む一般社団法人「双葉郡地域観光研究協会」に関わるようになり、昨年10月から職員となった。インドをはじめ海外での営業の先頭に立って働く。バネルジーさんは同大学院博士課程で化学を専攻しながら、同法人にインターンとして参加している。
 同法人は初となったインド訪問で、インドからの観光客向けに福島の観光ツアーを開発することで現地企業と合意。ジャジュさんの地元である西部マハラシュトラ州の大学と、学生の研修旅行などに関する覚書も結んだ。
 双葉町は原発事故前、約7100人が暮らしていた。2022年に中心部の避難指示が解除されたものの、現在住んでいるのは約100人にとどまる。「人の流れを生み出すことで、地域に貢献する」。その思いから19年に同法人を立ち上げた山根辰洋さん(38)が、課外活動で東北の観光宣伝に取り組んでいた2人に声を掛けた。山根さんは「復興支援員」として、東京都八王子市からそれまで縁のなかった福島に移住。現在は双葉町議も務める。
 ジャジュさんは「双葉町には温かい人がいっぱいいて、魅了された。山根さんは町への情熱にあふれ、アイデアを実現させる力を持っている。私にとってロールモデルのような存在」と「双葉愛」を語る。バネルジーさんは「双葉はゼロからのまちづくりの最中。自分の活動で社会にインパクトを与えることができる。双葉のためというより、双葉と共に成長したい」と力を込める。
 山根さんは2人について「とても優秀。米国で働いたら、数千万円は稼げる人材」と、太鼓判を押す。2人がいたことでインドの人たちと「一気に距離が縮まった」といい、今後の活躍に期待を込めた。 

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一般社団法人「双葉郡地域観光研究協会」代表理事の山根辰洋さん(右)=2月20日、インド西部マハラシュトラ州(同法人提供・時事)
一般社団法人「双葉郡地域観光研究協会」代表理事の山根辰洋さん(右)=2月20日、インド西部マハラシュトラ州(同法人提供・時事)

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