習政権の閉鎖性顕著に=全人代、進む形骸化―中国 2024年03月05日 19時13分

5日、北京で開かれた中国全国人民代表大会(全人代)で、言葉を交わす習近平国家主席(左)と李強首相(EPA時事)
5日、北京で開かれた中国全国人民代表大会(全人代)で、言葉を交わす習近平国家主席(左)と李強首相(EPA時事)

 【北京時事】5日に開幕した中国全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で、習近平政権が対外的な情報発信に消極的であることが鮮明になっている。習国家主席(共産党総書記)の「一強」体制確立に伴い、憲法で「最高の国家権力機関」と定められた全人代の形骸化が進み、習氏がトップを務める党の権限は強まる一方だ。
 李強首相は5日、中国全土から集まった約3000人の出席者を前に政府活動報告を読み上げた。今回は李強氏にとって初の報告。しかし、新鮮味は感じられなかった。焦点の経済成長率目標は前年に続き「5%前後」と設定したものの、厳しい経済状況でどのように実現するのか具体策に欠けていた。失望が広がり香港の株式市場は急落した。
 過去の慣例に従えば、昨年秋に共産党の重要会議を開き、経済方針の大枠を決めた上で、今年の全人代で具体的な政策を討議するはずだった。しかし、党の会議はいまだに開かれていない。習氏は経済政策も含めて、自らに権限を集中させており、李強氏が新たな施策を打ち出す余地はほとんどなかった。
 今年の全人代では開幕に先立ち、1993年に定例化された首相の記者会見を取りやめることが発表された。過去の首相会見では未公表のデータが明らかにされたこともあり、「中国の透明性を確認する重要な窓口」(全人代公式SNS)という面があった。一方で「習氏は格下の首相による対外発信を快く思っていない」(外交筋)という指摘が以前から出ていた。
 今回の全人代では、首相が率いる国務院(中央政府)の職務について定めた法律の改正案が審議され、党の優位性を改めて規定する見通しだ。全人代常務委員会の李鴻忠副委員長は5日の趣旨説明で「国務院が党の指導を堅持することを明確にする」ことが改正の目的だと強調した。 

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