法服脱ぎ迷彩服に=最高裁判事「国守りたい」―義勇兵の防空部隊指揮・ウクライナ 2024年02月07日 15時35分

防空拠点でピザを囲むウクライナ最高裁判事のユーリ・チュマクさん(左)ら義勇兵部隊「ムリヤ」のメンバー=1月27日、キーウ南郊
防空拠点でピザを囲むウクライナ最高裁判事のユーリ・チュマクさん(左)ら義勇兵部隊「ムリヤ」のメンバー=1月27日、キーウ南郊

 【キーウ時事】裁判官として仕事を続ける傍ら、ウクライナの首都キーウ(キエフ)の防空部隊を指揮する最高裁判事がいる。「民間人虐殺を繰り返すロシアから国を守りたい」。ユーリ・チュマクさん(48)はロシアが全面侵攻を開始した直後、領土防衛に当たる義勇兵部隊「ムリヤ」に参加。週末は法服を脱ぎ、迷彩服姿でドローン襲来に目を光らせる。
 キーウ南郊、ソ連時代に建てられた古びたアパートの屋上にムリヤの防空拠点があった。寒さをしのぐだけの簡素な小屋でピザを囲むのはチュマクさん指揮下の隊員で、高等反汚職裁判所長官やキーウ地裁判事ら4人の裁判官。いずれもボランティアとして2週間に1度、24時間の防空任務に従事する。裁判官だけの班をつくった理由について「待機時間には雑談もするし、弁護士や検察官らと交じると利益相反が起きるからね」とチュマクさんは笑う。
 ロシアの侵攻直後、妻と娘2人を西部リビウに避難させ、自らはキーウに戻った。裁判官ら動員対象外の市民約700人がムリヤを結成。「多くは年を取り、防弾ベストを着て重い物を運べば、数日は筋肉痛で動けない。ましてや米海軍のエリート特殊部隊SEALS(シールズ)にはほど遠いが、自分や家族の住む場所を守らねばと思った」
 軍から支給されたのは、1944年のソ連製機関銃、同じく年代物のチェコ製機関銃と弾丸だけ。飛来するイラン製の自爆ドローン「シャヘド」は時速150キロ程度で「それほど速くはない」。だが、ロシアもシャヘドの塗装をグレーから夜間に見えにくくなる黒に変更したり、進入経路に変化をつけたりするなど工夫を凝らしており、撃ち落とすには「多少の運が必要だ」と語る。
 ムリヤ隊員の多くは前線に行き、人数は380人程度にまで減った。戦況は思わしくなく、チュマクさんも裁判官を辞めて前線に行く覚悟を固めている。「これは生存を懸けた戦争だ。中年で健康状態が良くなかろうが、生きられるかどうかの問題である以上、銃を持つことができれば戦うつもりだ」。 

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防空拠点でソ連製機関銃を見せるウクライナ最高裁判事のユーリ・チュマクさん=1月27日、キーウ南郊
防空拠点でソ連製機関銃を見せるウクライナ最高裁判事のユーリ・チュマクさん=1月27日、キーウ南郊

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