与党優位、最大野党に圧力=8日にパキスタン総選挙 2024年02月01日 17時41分

パキスタンのシャリフ元首相=1月29日、東部ラホール(AFP時事)
パキスタンのシャリフ元首相=1月29日、東部ラホール(AFP時事)

 【ニューデリー時事】パキスタンで8日実施される国民議会(下院、定数336)選挙まで1日で1週間となった。与党は実質トップのナワズ・シャリフ元首相が事実上の亡命生活から戻り、支持を拡大。刑事訴追などを通じて最大野党への圧力を強め、選挙戦で優位に立っているようだ。強力な軍の後押しも見え隠れする。
 「私が力を握っていた時、インフレや値上げはなかった」。地元報道によると、シャリフ氏は1月29日、東部ラホールで開かれた与党イスラム教徒連盟シャリフ派(PML―N)の集会でこのように強調。苦境にある経済の立て直しや、自らの首相在任時のような「黄金時代」を取り戻すと訴えた。
 過去3度首相を務めたシャリフ氏は昨年10月、英国から約4年ぶりに帰国。渡英前に二つの汚職事件で有罪判決を受けたが、帰国後の控訴審でいずれも逆転無罪となり、復権した。
 帰国には軍の意向もあったようだ。シャリフ氏の娘で与党幹部のマリヤム氏は別の集会で「軍が父を連れ戻した」と発言したと報じられた。
 パキスタンは軍事政権が長く続き、文民政権も軍を後ろ盾としてきた。その軍と対立したのが最大野党パキスタン正義運動(PTI)を率いたカーン元首相だ。カーン氏は2022年の自らに対する不信任決議可決や暗殺未遂は軍が糸を引いていると繰り返し批判してきた。
 カーン氏は今年1月30〜31日に国家機密を漏えいした罪などで相次いで実刑判決を受けた。収監中で出馬できないとはいえ、クリケットの元スター選手で人気は依然高い。政治指導者の好感度を問う最近の調査でもシャリフ氏を抑え首位だった。選挙直前の判決は、カーン氏の影響力をそぎたい与党や軍の意向が反映された可能性もある。
 PTIは幹部や支持者の訴追や拘束が続いているほか、党内の手続き上の問題を理由に選挙管理委員会から選挙のシンボルマークの使用を禁じられた。パキスタンでは文字が読めずにシンボルによって投票先を判別する人も多い。PTIにとって大きな打撃だ。 

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