スマトラゾウが急減=象牙目的の密猟や駆除で―インドネシア 2024年01月27日 05時33分

インドネシア・スマトラ島北部で見つかった死んだスマトラゾウ=2022年10月(同国環境・林業省提供)
インドネシア・スマトラ島北部で見つかった死んだスマトラゾウ=2022年10月(同国環境・林業省提供)

 【ジャカルタ時事】インドネシア西部スマトラ島を生息地とするスマトラゾウの個体数が、急激に減少している。象牙目当ての密猟の横行や住民による「駆除」が主な原因だ。地元環境保護団体の調査によれば、2020年までの3年間だけで700頭前後が減ったとされ、研究者からは「密猟の法定刑が禁錮5年と軽いことも問題」との指摘が出ている。
 スマトラゾウはアジアゾウの亜種で、野生個体はスマトラ島だけに生息。国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、絶滅寸前を意味する「CR(深刻な危機)」に指定されている。環境保護団体によると、1985年には最大で4800頭いたとみられるが、20年には推定920~1360頭にまで減少した。
 地元メディアによると、スマトラ島中央部にあるテッソニロ国立公園で10日、左の牙を切り落とされた雄が、足を引きずった状態で発見された。治療のかいなく息を引き取り、消化器からは毒物とみられる黒い粉が検出されたという。
 個体数減少は密猟だけが原因ではない。農園や住宅地の開発のために森が切り開かれ、ゾウの活動範囲は狭まる一方。ゾウと人間の生活圏が近くなった結果、農作物への食害に加え、移動の際に家屋などを踏み荒らすことから「害獣」と見なされ、住民に駆除されるケースも相次いでいる。
 環境保護団体が22年までの12年間に命を落とした183頭を調べたところ、自然死は24頭だけで、33頭が密猟、55頭は住民とのトラブルで殺されたことが判明した。 

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スマトラゾウの親子=2023年9月、インドネシア・スマトラ島北部(同国環境・林業省提供)
スマトラゾウの親子=2023年9月、インドネシア・スマトラ島北部(同国環境・林業省提供)

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