看板法案、薄氷の通過=身内造反、党結束に影―米政権 2025年07月04日 14時01分

【ワシントン時事】第2次トランプ米政権の看板政策を盛り込んだ大型減税関連法案が3日、上下両院を通過した。ただ、低所得者支援の削減や財政赤字拡大への不満は強く、採決では身内の共和党から造反が出て賛否が伯仲。来年11月の中間選挙に向けた結束に不安を残した。
法案は不法移民対策や、飲食店従業員らが受け取るチップの税額控除など、昨年の大統領選で掲げた公約を網羅。トランプ氏は議会通過を受け「米国をロケットのように飛躍させる」と成果を誇示した。
だが、上院では1票、下院では4票と、いずれも僅差での可決となった。低所得者向け医療制度「メディケイド」削減への不満は与党内にも渦巻いており、ティリス上院議員は地元州の66万人超が受給資格を失うとして反対票を投じた。トランプ氏が「メディケイドは削らない」と繰り返し宣言してきたことを踏まえ、「裏切りだ」と議場で批判した。
全米で7100万人超のメディケイド受給者のうち、1200万人近くが医療保険を失うとの試算もある。トランプ氏は昨年の大統領選で、ヒスパニック系や黒人の有権者に支持を広げ勝利したが、米政治専門紙ポリティコは法案が「労働者階級の有色人種や農村部に深刻な打撃」を与え、新たな支持層を失望させると指摘する。
財政規律を持論とする富豪イーロン・マスク氏も「債務を膨張させる」と法案を酷評。反対票を投じた議員の選挙を資金面で支援する考えを示し、トランプ氏との対決姿勢を強めている。
野党民主党は中間選挙を見据え、法案を最大の攻撃材料とする方針で、各地で抗議行動を計画。同党下院トップのジェフリーズ院内総務は3日、採決に先立ち9時間近い反対演説を行い、法案が「子供たちや高齢者、退役軍人から食料を奪い、億万長者に巨額の減税を与える」と非難した。