3.テクニカル・アプローチ
1.テクニカルにみたトレードチャンス
テクニカル・アプローチをとる人達は、ランダムウォーク理論とは逆に過去の株価を分析することで付加価値を得られると信じて行動しています。筆者もその中の一人ですが、その哲学とまでは言いませんが、拠り処・背景は下記の通りです。
- 株価は実績・すでに起こったことや分かったことではなく、次に起こるであろうことの期待・不安で形成される。効率的市場仮説が言うマーケットが織り込んでいる情報で形成された「公正価格」を中心に、そこから多方面に大きく乖離して常に休むことなくぶれて形勢されるはず。
- もう少し言うと、何かの事件が起こった時、マーケットが公正な価格に行き着くまで時間がかかり、そのため需給が過剰に株価を動かすこともある。効率的な市場など存在しないと考える。 現実に実務としての運用業務や分析業務に携わってみると、意外と多くの上記理論では説明のつかないアノマリーが存在する(起きている)。実務では一般論ではなく、一時的・局地的に起っていれば良いので、そのわずかな時間が収益チャンスとなる。
- もっとも、一般に言われるアノマリー(小型株効果やリターン・リバーサルあるいはカレンダー効果)などは、経済環境や市場要因などによって一時的に生じるものであり恒常的なものではないと認識している。
この部分については、このくらいにしておきましょう。
前章のマーケット・タイミングでは、市場全体やグループ間の動きから、稀にしかにやって来ない収益チャンスと把握について例示しましたが、ここでは、個別銘柄で感じていることの中からいくつかを上げておきましょう。
- 長期上昇トレンド&下落トレンド
- セリング・クライマックスからの反転
- 長大陽線形成後の大幅反落
- 出来高増加の後の株価急騰
- 季節習性や波動形成
- 株価は業績に先行(公表時期の関係でそう見える?) など
上記のアノマリーは一例ですが、これらもマーケットで生じる歪み・偏り、平均からの乖離、アンバランとしてトレースします。売買タイミングをとらえれば、付加価値を得ることができると考えています。そして、確率計算、感覚的なものも含めてです。
(1)上昇トレンド(コア銘柄)
【図表】コア銘柄分析
ここでは分析をするのは、上昇トレンドにある銘柄(コア銘柄)を把握することにより、付加価値を得ることができる確率が高くなるはずというもの。正確に言えば「マーケットには上昇トレンドにある銘柄、下落トレンドにある銘柄、方向感のない銘柄の3グループが存在していて、その割合を把握すること、加えてそのグループの性格(投資テーマ)などを探ることによりマーケット全体の動きがわかるはず」となります。当然のことながら、上昇トレンドにある銘柄が、方向感のない銘柄や下落トレンドにある銘柄数を上回れば、一般に平均株価は上昇します、そして経済環境・社会情勢を反映して物色されている銘柄群には共通の投資テーマがあるからです。
なお、上表は、2018年9月18日付けの「マーケット・コメント」に掲載した2018年9月14日のデータ分析です。この時点で、コア銘柄の中でも6カ月にわたる日経平均22,000円-23,000円の長期レンジ相場を先行して抜け出している31銘柄。共通する投資テーマは、ニューテクノロジー、ニュービジネスとしています。
(2)セリングクライマクス
次は、セリング・クライマクスの銘柄をスクリーニングしてみましょう。使用するツールは、ゴールデン・チャート社が提供している株式チャート分析ソフト「GC HELLO TRENDMASTER」。日足ベースでは過去1000日の検証ができるので便利です。直近時点で、大きく売られた局面がありませんので、かなり遡って、2016年2月12日のデータ分析です。
【図表】検索条件設定画面(GC HELLO TRENDMASTER)
狙い
下落してきたマーケットの最後の局面、信用取引の証拠金切れやロスカットルール適用等需給の関係で やむを得ず投げ売りしてきた株式を買い、短期リバウンドを狙う。
スクリーニング条件
① 前日終値と当日安値を比較、当日安値が▲3%以上下落していること。
② 直近高値(ここでは200日間の高値)から▲15%以上下落していること。
③ 当日の出来高が、前日までの25日間の出来高平均の2倍以上であること。
検索結果
【図表】検索結果画面(GC HELLO TRENDMASTER)
上表は、条件3の当日出来高が前日まで25日間の2倍以上の条件で、倍率の高い順に表示しています。実践を行っていると容易に理解できると思います。
例示して行くと切りがありませんので、あとは実践編で…、その都度お知らせしていきたいと思います。
(3)伝統的なテクニカル指標について
移動平均線、RCI、RSI、MACD、ボリンジャーバンドなど個別銘柄の売買タイミングを測るテクニカル指標、それも伝統的な指標が数多くあります。主にトレンド系、オシレータ系などに分類されますが、「あるテクニカル指標」をそのまま使っている投資家がどの程度いるのか。長期的な経験から言うと「多分、自分なりの判断基準や加工ノウハウがあって使いこなしている」感がします。13週移動平均と26週移動平均のクロスした時点で「買い、売り」を行うトレードをシステマティックに繰返しても、東証第一部市場上場全銘柄に適用してどの程度利益を上げられるものか…。随分、昔の話になりますがそれ程多くないと記憶しています。
少し、詳しく説明しますと13週移動平均線が26週移動平均線を上回る形でのクロスは、直近の動き(13週)が少し長い期間で見た動き(26週)より強くなっていることを示します。また同様に逆な場合は直近の動きが以前より弱くなっていることを示し、前者は「買い」、後者は「売り」というものです。同じ論法で直近の株価と13週移動平均線で判断することもあります。
なぜ、それ程有効でないのか…というのは、「波動形成のパターンが、各銘柄で異なるから」。上記の例でいえば、13週が最適な銘柄もあれば20週が最適な銘柄もあり、安定している銘柄もあれば不規則な銘柄もあり千差万別です。最適パラメタの計算…。
以前、最適パラメタを求めてシステマティックに売買を行う機能を組み込んだことがありますが、計算が重いわりに利用者が少ない、でも強力なファンも。再開発を考えています。
これらの伝統的なテクニカル指標は、どう使えばどの程度の確率があるのかを知って利用している人は少ないと思います。でも、過去のデータですがどの程度の確率がある のかを知って利用したいと思いませんか。各指標には作った人の想いがある…、その想いを知らずに使わないのは無知、コンセプトを知って自己流に使っているのは作者に失礼、想いを知って局面に応じて有効利用できればOK、AI、判別なども応用できれば、なお素晴らしい。このような位置付けで伝統的なテクニカル指標を眺めています。
2.GC HELLO TRENDMASTERとGCSAMのマーケット・インディケータ
これまで説明してきました、マーケット・タイミングはGCSAMの分析ツール「マーケット・インディケータ」、テクニカルにみたトレードチャンスは株式会社ゴールデン・チャート社の株価分析ソフト「GC HELLO TRENDMASTER」の銘柄検索機能を使いました。
冒頭で述べましたが、「確率」を意識して自らの株式投資を考える際は、自分でパソコン上に分析インフラを持つこと、感覚的でもよいので「確率」がわかるグラフ・数表が掲載されているサービスが必要になります。
このWebサイトで提供する「マーケット・タイミング」は、上記のソフトを使って分析した結果を掲載します。一緒に勉強してみませんか。動いているものを追いかける…。「自分の判断に自己責任」、責任だけではありません。自分で分析した結果通りになった時の爽快感はこの上ないものです。マーケットは常に構造変化の中にありますが、分析手法も多くの投資家が使うようになれば、うまく機能しなくなるもの。日々、新しいものを求めて勉強、筆者も同様です。