2.マーケット・タイミング

 具体的には、①.マーケットの下方への行過ぎ、上方への行き過ぎからの反転タイミング、②.マーケットの保合いから離脱するタイミングの把握、③.物色の跛行の度合いの行き過ぎの把握と跛行解消のタイミングを捉えることをテーマにしています。 

 単純に、今が買いか売りかの評価ではありません。現状、統計処理が大きなウェートを占めていますが、天・底の教師データを与えて判別させてみると意外ときれいな結果が出ているものもあり、そのままパイプラインに乗せる形で準本番に移行しています。ただし、マーケットは常に構造変化を起こしているのでチューニングが必要、他の領域の判別とは異なるところかとみています。 

コンセプト

  • 行き過ぎた異常な状態は、ノーマルな状態に回帰する確率が高い
  • 行き過ぎた異常な状態で逆張りを行い、リスクテイクすれば、高いパフォーマンスを得る確率が高い

アプローチ方法

 1.マーケットの偏り・歪み

⇒ マーケット(例えば東証第一部市場上場銘柄)のある指標の銘柄数が通常の分布形状からかけ離れていないか。  

  • 移動平均上位銘柄比率20%を下回る。銘柄比較。
  • 日柄整理を表すRCI底値圏銘柄比率の30%超え など

 2.マーケットの群間のアンバランス

⇒ 偏り・歪みは全体の分布の形。アンバランスは、複数の群(A群とB群など)のバランスが異常に崩れた状態になっていないかどうか。 

  • 大型株と小型株との相対比較(大型株に偏りあるいは小型株偏り)を各指標の銘柄構成比で比較
  • 関連して銀行株など大型株を代表する性格をもつTOPIXと値嵩優良株を代表する日経平均の相対比較 など

 3.マーケットの平均値や均衡点からの乖離

⇒ 主に、各指標の平均値、均衡点からの乖離

  • 正規分布に近い13週移動平均乖離率のファットテール など 

 アプローチ方法については、以下、例をあげて説明します。           

                              

1.マーケットの偏り・歪み

 個々の銘柄の株価の間には、それなりの安定したスプレッドが存在します。個別銘柄間においてはマーケット全体の動きに反して大きく乖離するものも存在するものの、2000社近い組合せになると、全体の動きから大きく離れる割合は、それ程多くないということであろうと思われます。2000年のITバブルでは、ネット関連銘柄であれば何十年先の利益をも買うといった現象が起こりました。1989年バブルでは、ある大学教授のQレシオが登場して株価水準を正当化しました。ITバブルでは、ネット関連銘柄であれば、高い予想PERであっても妥当だと錯覚しました。「マーケットの偏り・歪み」を冷静に捉えられるようになりたいものです。

 それでは、マーケットの偏り・歪みについて、13週移動平均上位銘柄比率で説明します。下記のグラフはTOPIXの週足チャートです。この後、偏り・歪み、アンバランス、均衡点からの乖離について説明しますが、ここ20年弱のマーケットの動きを、下記のグラフで頭の中に入れておいてください。話は横にそれますが、グラフ下段の青い縦線(上下棒)は、13週移動平均乖離率です。上下にバランスよく描かれていますが、上方・下方に大きく離れたところが行き過ぎ…、エントリーポイントとなります。

【図表】TOPIX週足

【図表】移動平均上位銘柄比率

【図表】13週移動平均上位銘柄比率の分布

 上記グラフ上段は13週移動平均上位銘柄比率、同下段は26週移動平均上位銘柄比率を2001年から表示したものです。

 左側グラフは、2008年年初から直近18年8月末まで13週移動平均上位銘柄比率の値を、度数分布にしたものです。

 基準は、時々変更しますが、基本は20%以下で買いシグナルです。

 左側のグラフ、度数分布は50を中心に左右対称の分布(正規分布)にはなっていませんが、これは2012年末からのアベノミクス相場によるもの。右型上がりの上昇トレンドの相場によるものです。ただし、その中にも13週移動平均上位銘柄比率が20%以下になった局面があることにご注目ください。1年間に1-2回の買い場があることを示しています。この指標単体で利用することは少ないのですが、成功確率は悪くありません。 


【図表】順位相関底値圏銘柄比率

【図表】順位相関底値圏銘柄比率の分布

 上記グラフ上段は、順位相関底値圏銘柄比率を2001年から表示したもの。左側グラフは、2000年年初から直近2020年8月末まで度数分布にしたものです。基準は変更することがありますが、基本30%以上で買いシグナル、20%以上で弱い買いシグナルとしています。買いシグナル銘柄だけを集計しているので、分布は右側に流れる形です。 


 順位相関底値圏銘柄比率は、筆者が開発したシグナルです。上司がRCIを個別銘柄のタイミング指標として開発したので、底値圏の度合いを確率よく測るために、全体でどの程度の銘柄が底値圏にあるかを集計しています。RCIそのものが日柄を見ているので、日柄整理の指標として使います。マーケットが下振れしていない局面でもシグナルを出すのが特徴かと思います。 


2.マーケットのアンバランス

【図表】TOPIXと日経平均株価の相対比較


【図表】TOPIXと日経平均株価の相対比較の分布

 上記グラフ上段はTOPIX対日経平均相対比較・13週、下段は同26週を2001年から表示したもの。 左側グラフは、2010年年初から直近2018年8月末までTOPIX対日経平均相対比較を度数分布にしたものです。基準は、0.95以下は日経平均行き過ぎ1.05以上でTOPIX の行き過ぎを示します。と言っても、利用の仕方は、マーケット転換点の把握の参考に利用するのが主になります。

 日経平均が値嵩ハイテク、TOPIXは金融株や大型株の値動きを反映するのでNT倍率が右肩上がりになるのは止むを得ないところ。対して、相対比較は短期で見ているのでバランスが良く動くのが特徴です。


3.マーケットの均衡点からの乖離

【図表】13週移動平均乖離率


【図表】13週移動平均乖離率の分布

 上記グラフはTOPIX13週移動平均乖離率を2001年から表示したものです。左側のグラフはTOPIX13週移動平均乖離率の分布です。正規分布に近く、左側に大きく流れているのが特徴です。正規分布から大きく離れて位置する固まりをファットテールと呼びますが、2000年以降ではリーマン・ショック時と今回の新型コロナ感染拡大による下落の2回、正規分布の範囲を大きく離れてきたという点では、マーケットは異常な局面ととらえることができます。システマティックな運用は、例外ゾーンでの対応となります。一般には、7.5%以上-10%未満で上方への行き過ぎの「要注意」、10%以上で「同要警戒」▲10%以下で下方への行き過ぎの「要警戒」、▲7.5%以下-▲10%未満からで「同要注意」となります。


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