FF金利見通し、年末までに5.1%=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2024年06月13日 10時15分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は6月12日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5,50%に据え置いたことについて「インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が深まるまで、FF金利の目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えています。今年のこれまでのデータからはそのような確信が得られていません」とこれまでの見解を繰り返しました。今回FOMCが公表した「経済・政策金利見通し」では、今年末のFF金利は5.1%と3月時点の見通しから大幅な上方修正をしました。今年中の利下げ幅が大幅に縮小されたこととなります。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2024年6月13日

 私たちは、米国民の利益のために「最大雇用」と安定した物価という2つの目標の達成に引き続き全力を注いでいます。過去2年間、わが国の経済はこの2つの目標に向けて大きく前進しました。労働市場は、力強い雇用の増加が続き、失業率も低水準にあるなど、バランスが取れてきました。インフレ率はピーク時の7%から2.7%へと大幅に緩和されましたが、まだ高すぎます。私たちは、すべての人に恩恵をもたらす力強い経済を支えるため、インフレ率を目標である2%に戻すことに重い責任を託されています。

 本日のFOMCは、政策金利の据え置きと証券保有残高の継続的な削減を決定しました。私たちは、需要を供給と一致させ、インフレ圧力を軽減するため金融引締め政策を維持しています。

 最近の経済指標は、経済活動が引き続き堅調なペースで拡大していることを示唆しています。GDP成長率は昨年第4四半期の3.4%から第1四半期は1.3%へと減速しましたが、在庫投資、政府支出、純輸出を除いた民間国内最終購買額は第1四半期に2.8%となり、2023年下半期とほぼ同水準の高い伸びとなりました。個人消費は昨年の堅調な伸びから鈍化しましたが、引き続き堅調です。設備投資と無形資産投資は、昨年の低調なペースから回復しています。供給環境の改善が、力強い需要と昨年来好調な米国経済を支えています。当委員会の経済予測サマリーでは、当委員会の参加メンバーは概してGDP成長率が昨年のペースから鈍化すると予想しており、中央値では今年が2.1%、今後2年間で2.0%となっています。

 労働市場は需給バランスが改善しています。4月と5月の雇用者数は月平均21万8000人増加し、依然好調なペースではありますが、第1四半期のペースを少し下回りました。失業率は上昇したものの、依然4%と低水準です。過去数年間の力強い雇用創出は、25歳から54歳までの労働参加者の増加と移民の継続的な増加を反映して、労働者供給の増加を伴ってきました。名目賃金の伸びはこの1年で鈍化し、雇用と労働者のギャップは縮小しました。全体として、広範な指標は、労働市場の状況がパンデミック前夜とほぼ同じ状態に戻ったことを示唆しています。FOMC参加メンバーは労働市場の力強さは今後も続くと予想しています。SEP(経済予測サマリー)の失業率予想の中央値は、今年末が4.0%、来年末が4.2%となっています。

 インフレ率は過去2年間で著しく低下しましたが、長期目標である2%を上回っています。4月までの12カ月間、PCE物価指数(総合指数)は2.7%上昇し、変動の激しい食品とエネルギーのカテゴリーを除いたコアPCE物価指数は2.8%上昇しました。今朝発表された消費者物価指数(CPI)は5月までの12カ月間で3.3%上昇し、コアCPIは3.4%上昇しました。今年初めに発表されたインフレ率は予想を上回りましたが、最近の月次のインフレ率はやや緩やかになっています。長期的なインフレ期待は、家計、企業、予測担当者を対象とした広範な調査や金融市場の指標に反映されているように、依然として十分に定着しているようです。SEPのPCEインフレ予想中央値は、今年2.6%、来年2.3%、2026年2.0%となっています。

 私たちは、高インフレが購買力を低下させ、特に食料、住宅、交通などの必需品のコスト上昇に対応できない人々にとって大きな苦難をもたらすことを痛感しています。私たちの金融政策行動は、米国民のために「最大雇用」と安定した物価を促進するという二重の使命によって導かれています。これらの目標を支持するため、当委員会の本日の会合では、フェデラルファンド金利(FF金利)の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、保有有価証券の削減を継続することを決定しました。

 過去1年間に逼迫した労働市場が緩和され、インフレ率が低下したことで、雇用とインフレの目標達成に向けたリスクは、より良いバランスに向かっています。しかし、景気の先行きは不透明であり、インフレリスクには引き続き注意を払っています。私たちは、インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信が深まるまで、FF金利の目標レンジを引き下げることは適切ではないと考えています。今年のこれまでのデータからはそのような確信が得られていません。しかし、直近のインフレ指標は年初より良好で、インフレ目標に向けた前進は緩やかです。インフレ率が持続的に2%に向かっているという確信を強めるには、さらに良好なデータを見る必要があります。

 私たちは、金融引締め政策を早急にあるいは過度に縮小することは、これまでのインフレ率の緩和を逆行させる可能性があることを承知しています。同時に金融引締め政策の縮小が遅すぎたり少なすぎたりすれば、経済活動や雇用を不当に弱める可能性があります。当委員会は、FF金利の目標レンジの調整を検討するにあたり、今後発表されるデータ、変化していく見通し、およびリスクのバランスを慎重に評価します。

 SEPでは、FOMC参加メンバーが各自が今後最も可能性が高いと判断するシナリオに基づき、FF金利の適正な道程に関する各自の評価を書き出しました。経済が予想通りに進展した場合、参加メンバーの中央値は、FF金利の適切な水準は、今年末に5.1%、2025年末に4.1%、2026年末に3.1%になると予想しています。しかし、これらの予測は当委員会の計画や決定事項ではありません。経済が発展するにつれて、「最大雇用」と物価安定の目標に向け最も効果的に推進するために、適切な政策の評価は調整されることになるでしょう。経済が堅調に推移し、インフレが持続するのであれば、現在のFF金利目標レンジを維持する用意があります。労働市場が予想外に弱まったり、インフレ率が予想以上に急速に低下した場合には、これに対応する用意があります。私たちの二重の使命の両面を追求する際に直面するリスクと不確実性に対処する態勢を整えています。FRBは今後も、データの全体像および、データが見通しとリスク・バランスに与える影響を勘案して、会合ごとに意思決定を行っていきます。

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■関連情報(外部サイト)

FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)