【2024年4月25日~26日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年05月10日 08時48分

金融政策決定会合における主な意見(2024年5月9日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
  • 米国中心に海外経済全体として、見通しが上方修正される動きがみられている。
  • 個人消費は物価上昇を受けて弱めであるが、足もとの賃上げモメンタムの強さを踏まえると、先行き勢いを取り戻していくものとみている。
  • 供給制約等での設備投資先送りによって、企業が商機を逸し生産性を改善できず、賃上げ原資の確保が未達となる恐れがある。そのため、設備投資動向に注目している。
  • 需給ギャップはゼロ近傍である一方、短観の設備と雇用人員の不足感の加重平均DIは歴史的にみても高い水準となっている。見通し期間を通じて潜在成長率を上回る成長が安定的に続くと見込めるかどうかの判断のためには、この乖離の理由についてもみていく必要がある。
  • 生産や研究開発などコア業務分野においても、同業競合他社と協働する動きが拡がっている。こうした取り組みが人手不足、物価高、金利上昇等のストレスに対応し、わが国企業の新たな変革期となることを期待する。
  • 持続的な賃金上昇の実現には、価格転嫁等で収益体質を向上した中小・中堅企業が設備投資や事業構造強化により着実に成長力を高め、また新市場を創出するスタートアップがユニコーンへ成長するといった企業のダイナミズムが必要である。

(2)物価

  •  消費者物価の基調的な上昇率は、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • 物価見通しは、海外インフレの継続による輸入物価上昇に加え、国内のタイトな労働需給、企業の価格設定行動の変化が継続することなどから、概ね2%の水準を維持すると考えられる。
  • 円安と原油高は、コストプッシュ要因の減衰という前提を弱めており、物価の上振れ方向のリスクにも注意が必要である。
  • 足もとの円安と原油価格等の上昇が、輸入物価を通じて企業物価へ波及しつつある状況を鑑みると、賃上げに伴うサービス価格の高まりに加えて、現在伸び率が低下している財価格が底打ちして反転する可能性にも注意を払う必要がある。
  • 円安は、短期的にはコストプッシュ型の物価上昇を招くことで経済を下押しするが、インバウンド需要の増加や製造業における生産拠点の国内回帰などを通じ、中長期的には生産や所得への拡張効果もあるため、基調的な物価上昇率の上振れにつながり得る。
  • 輸入物価上昇を起点としたコストプッシュや予想物価上昇率の上昇に伴うインフレ率上振れのリスクもあるため、今後、2022年以降に続く第2ラウンドの価格転嫁が生じるか、予断なく見極める必要がある。
  • 賃金・物価スパイラルの想定以上の進展、円安の進行、積極的な財政政策、人手不足を主因とする供給力不足、資源価格の上昇など、様々な物価上振れのリスク要因があり、注意が必要である。
  • 収益力や給与水準等で大企業と中小企業間で二極化が進み、中小企業では人材係留目的の賃上げが多く、大企業の構造改革成果の波及はまだ弱いとみられる。

2.金融政策運営に関する意見

  • 経済・物価の見通しが実現し、基調的な物価上昇率が上昇していくとすれば、金融緩和度合いを調整していくことになるが、当面、緩和的な金融環境が継続すると考えている。
  • 展望レポートの見通しには引き続き不確実性が高いが、これが実現するのであれば、約2年後に、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現し、需給ギャップもプラスということになるので、金利のパスは、市場で織り込まれているよりも高いものになる可能性がある。
  • 「物価安定の目標」の達成時における不連続かつ急激な政策変更によるショックを抑えるために、経済・物価・金融情勢に応じて、緩やかな利上げを行うことで金融緩和度合いを調整することも選択肢として考えられる。
  • 経済にストレスを与えないように金融緩和の度合いを調整するには、今後、見通しの確度の高まりに合わせて、適時適切に、政策金利を引き上げていくことが必要である。
  • 政策金利の引き上げについて、そのタイミングや幅に関する議論を深めることが必要である。
  • 金融緩和の更なる調整を検討するうえで、夏場にかけて、前向きな企業行動の確認、具体的には堅調な設備投資の継続や賃上げを契機とする年後半に向けた個人消費の改善傾向、がポイントである。
  • 基調的な物価上昇率が2%を下回る現状では、緩和的な金融環境を今後も相応に長く維持する必要がある。ただし、円安を背景に基調的な物価上昇率の上振れが続く場合には、正常化のペースが速まる可能性は十分にある。
  • 2023年は可処分所得が伸びず、消費は0%への貯蓄率低下による増加であった。家計の購買力はまだ弱く、当面は緩和的な金融環境継続が妥当と思われる。
  • 前回会合後に公表された消費者物価のデータ等をみると、前回会合時点で金融政策の枠組みの見直しの条件は既に満たしていたと考えられ、政策変更後においても市場に急激な変動は生じていない。
  • 長期国債の買入れについては、イールドカーブ・コントロール解除後の市場の状況を見ているところであるが、どこかで削減の方向性を示すのが良い。これとは別に、国債需給などに応じた日々の調整は、金融市場局において、丁寧に行うべきである。
  • 国債保有量の正常化、過剰な水準にある準備預金の適正化という観点から、日銀のバランスシートの圧縮を進めていく必要がある。段階的にイールドカーブ・コントロールを柔軟化したことが円滑な出口につながったことも踏まえれば、国債買入れの減額も、市場動向や国債需給をみながら、機を捉えて進めていくことが大切である。
  • 国債の需給バランスを踏まえ、市場機能回復を志向し、現状6兆円程度の毎月の長期国債買入れを減額することは選択肢である。市場の予見可能性を高める観点で、減額の方向性を示していくことも重要である。
  • 市場動向を踏まえると、保有するETFやJ-REITの取扱いについても具体的議論ができる環境になりつつあると考えられる。
  • 本行保有ETFの取扱いを検討するにあたり、その処分方法が株式市場の機能に与える影響や市場に及ぼすインパクトの大きさ等を考慮する必要がある。したがって、簡単な解決策はないが、仮に長い時間がかかっても方向としては残高をゼロにしていくべきである。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 設備投資は過去最大規模となり、賃金引き上げの流れが大企業以外にも広がっていることがうかがえる一方、人件費を価格転嫁できていない中堅・中小企業も多く、消費は力強さを欠いている。
  • 政府としては、いまだ道半ばであるデフレ脱却に向けて、あらゆる政策を総動員し、賃上げを強く後押ししていく。
  • 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  •  日本経済はこのところ足踏みもみられるが、緩やかに回復している。先行きも緩やかな回復が続くと見込むが、世界経済の不確実性や円安による家計購買力への影響には注意が必要である。
  • 賃上げ支援に加え、定額減税により消費を下支えするとともに、潜在成長率の引き上げに取り組む。
  • 日本銀行には、政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向け、適切な金融政策運営を行うことを期待する。

以上


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2024年4月25日、26日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)