【2025年1月23日~24日】総裁定例記者会見(一部抜粋・要約) 2025年01月27日 17時05分
総裁記者会見一部抜粋・要約(2025年1月27日)
1.今回の金融政策決定会合の内容について
- 金融市場調節方針について、無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標をこれまでの0.25%程度から0.5%程度へと変更した。また、これに伴い、補完当座預金制度の適用利率および基準貸付利率の変更も決定した。なお、これに関して、中村委員は、次回の金融政策決定会合において、法人企業統計等で企業の稼ぐ力が高まったことを確認したうえで、金融市場調節方針の変更を判断すべきであるとして、金融市場調節方針等に反対した。
- このほか、貸出増加支援資金供給について、予定通り本年6月末をもって新規の貸付を終了するとともに、本資金供給を円滑に終了する観点から、経過措置として7月以降、2025年中は、満期到来額の半分を上限として、貸付期間1年の借り換えを認めることを全員一致で決定した
2.利上げを決めた理由について
- 今日の会合では、展望レポートの見通しについて議論し、わが国の経済・物価が、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しており、先行き見通しが実現していく確度が高まってきていると判断した
- 今年の春季労使交渉は、昨年に続き、しっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した。すなわち、今年も賃上げを継続するという企業の声が増加しているほか、支店長会議では、継続的な賃上げが必要との認識が幅広い業種・規模の企業に浸透してきているという報告もあった。また、各種のアンケート調査でも、昨年の同時期対比で賃上げの実施を計画する先が増加していることを確認した。
- 米国については、まずインフレ率が低下するもとで、様々なデータをみると、経済がしっかりとしていると評価した。また、トランプ大統領が就任し、政策の大きな方向性が示されつつあるが、その後も国際金融資本市場は、全体として落ち着いていると判断した。
- 輸入物価は、前年比でみれば、引き続き抑制された水準にあるという点は変わりはないとみている。ただ、前回10月の展望レポート時点との対比でみると、為替円安等に伴い、輸入物価が上振れていて、本日取りまとめた新しい展望レポートでは、消費者物価の見通しは、24年度が2%台後半となった後、25年度も2%台半ばと高めとなった。
- こうした状況を踏まえ、2%目標の持続的・安定的な実現という観点から、金融緩和度合いの調整をすることが適切と判断した
3.利上げの影響と今後のペースについて
- 今回の金利引き上げは、昨年7月の0.25%への引き上げ時と同様、市場金利等の上昇を介して、経済に影響を及ぼすと考えている。もっとも、今回の金利変更後も、実質金利は、大幅なマイナスが続くことになる。従って、緩和的な金融環境が維持され、引き続き経済活動をしっかりとサポートしていくと考えている。
- 今後について、経済・物価の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。そのうえで、緩和度合い調整のペースやタイミングについては、今後の経済・物価・金融情勢次第であって、予断は持っていない。毎回の決定会合において、その時点で利用可能な各種のデータ・情報から、物価・経済の見通しやリスク、見通しが実現する確度を随時アップデートしながら、適切に政策を判断していきたいと思っている。
4.利上げがビハインド・ザ・カーブに陥るリスクについて
- 消費者物価(除く生鮮)全体、これが25年度にかけて、少し大幅に上方修正になっている
- ただこれは、現在の見通しでは、取りあえずカレンダーイヤーで言って、今年の半ばくらいまでの上方修正で、その後は落ち着いてくるものというふうにみている。その理由は、ここの原因がコストプッシュ的なものであるからで、一方で、基調的な物価上昇率については、見通しに沿って緩やかに上昇し続けているという範囲にとどまっているかなというふうにみている。従って深刻なビハインド・ザ・カーブ現象、あるいは政策金利がそういう水準にあるというふうには今のところみていない。
5.利上げを行っていく理由が分かりにくい
- 利上げをしていく一般的な理由としては、インフレ率が徐々に上がっていく、あるいは基調的なインフレ率が上がっていく中で、きわめて金融緩和度合いが強い状況、金利が低い状況をあまり長期間続けると、インフレ率が後になって急上昇する、そうするとそこでものすごい急激な金利の引き上げを迫られることになりがちなのでこれを防ぐため。これは歴史的にもいろんな国で時々みられた現象で、そうなってはコストの方が大きいので、まず経済の体温あるいは物価の情勢に合わせて、適宜利上げをしていくことが必要であると考えている。
- 更に利上げをした場合に、影響はどうなんだということだが、その影響は必ずしも事前にはっきりとは分からないという部分もあり、それから、他方で、どれくらい基調的な物価上昇率あるいは予想インフレ率みたいなものが現在上がりつつあるのかっていうのも、データで分かる部分もあるし分からない部分もあるという中では、やったことの効果を確かめつつ段階的に動いていくというのが適切な対応かなと思っている。
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
総裁記者会見要旨(2025年1月23日、24日開催分)(日本銀行)