米国債利回りの上昇を注視=パウエル議長FOMC記者会見スピーチ 2023年11月02日 09時55分

 連邦準備制度理事会(FRB)パウエル議長は11月1日、連邦公開市場委員会(FOMC)直後の記者会見冒頭のスピーチで、「長期債利回りの上昇に牽引されて、ここ数カ月で大幅に引き締まった状況にあります。金融情勢の持続的な変化は金融政策の行方に影響を与える可能性があるため、私たちは金融情勢を注意深く監視しています」と、米国債10年利回りが上昇している現状に言及しました。
 今回のFOMCでは、FF金利を5.25~5.50%に据え置く決定をしました。年内FOMCの開催は残り1回(12月12日、13日)、ここで今回の利上げサイクルに終止符を打つか注目されます。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2023年11月2日

 昨年初め以来、FOMCは大幅な金融引締め政策を実施してきました。政策金利を5.25%引き上げ、保有有価証券の削減を急ピッチで続けてきました。金融引締め政策は、経済活動とインフレに下方圧力をかけていることを意味していますが、この引締め効果はまだ十分に現れていません。本日、私たちは政策金利を据え置き、保有有価証券の削減を継続することを決定しました。これまでの経過と、私たちが直面している不確実性とリスクを考慮し、当委員会は慎重に事を進めています。追加的な金融引締めの程度や、引締め政策を続ける期間については、入ってくるデータ、見通しの進展、リスクバランスを総合的に判断して決定していきます。

 最近の経済指標は、経済活動が力強いペースで拡大しており、以前の予想を大幅に上回っていることを示唆しています。第3四半期の実質GDPは、個人消費の急増に後押しされ、年率4.9%と大幅に増加したと推定されます。住宅セクターは、夏場にはやや持ち直したものの横ばいとなり、住宅ローン金利の上昇を大きく反映して、前年同期を大きく下回る水準で推移しました。金利上昇は企業の固定投資にも重荷となっているようです。

 労働市場は依然として逼迫していますが、需給バランスは改善傾向にあります。過去3ヵ月間の雇用者数は月平均26万6000人増加し、好調なペースで推移していますが、年初の水準を下回っています。失業率は3.8%と依然として低く、力強い雇用創出は労働者供給の増加を伴っています。労働力率は昨年末から上昇し、特に25歳から54歳の労働力率が上昇しました。名目賃金の伸びには緩和の兆しが見られ、求人数は今年に入って減少しています。雇用と労働者の格差は縮小しているものの、労働需要は依然として供給力を上回っています。

 インフレ率は長期目標である2%を大幅に上回っています。PCE物価指数は9月までの12カ月間で3.43%上昇しました。変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は3.7%上昇しました。インフレ率は昨年半ばから緩やかになり、夏にはかなり良好な数値が出ました。しかし、数カ月の良好なデータは、インフレ率が目標に向かって持続的に低下しているという確信を得るために必要なことの始まりに過ぎません。インフレ率を持続的に2%まで低下させるプロセスは、まだ長い道のりがあります。

 私たちの金融引締め政策は、経済活動とインフレに下方圧力をかけています。当委員会は本日の会合で、フェデラルファンド金利の目標レンジを5.25~5.50%に維持し、保有有価証券の大幅な削減プロセスを継続することを決定しました。私たちはインフレ率を長期的に2%まで低下させるのに十分な金融引締め政策を達成し、インフレ率がその目標への道筋をたどることを確信するまで、金融引締め政策を維持することに責任を負っています。

 私たちは、経済成長と労働需要の回復力を示す最近のデータに注目しています。潜在的な成長を上回る成長率やタイトな労働市場の持続が緩和されていないことを示す証拠が見つかり、インフレリスクの上昇に晒されることになれば、さらなる金融引締めが正当化される可能性があります。

 金融情勢は、特に長期債利回りの上昇に牽引されて、ここ数カ月で大幅に引き締まった状況にあります。金融情勢の持続的な変化は金融政策の行方に影響を与える可能性があるため、私たちは金融情勢を注意深く監視しています。

 不確実性とリスク、そしてこれまでの道のりを考慮し、当委員会は慎重に金融政策を進めています。私たちはこれまでと同様、会合ごとに入ってくるデータの全体像とそれらが経済活動とインフレの見通しおよび、リスクバランスに与える影響に基づいて意思決定を行っていきます。インフレ率を長期的に2%に戻すために適切と思われる追加的な政策引き締めの程度を決定する際、当委員会は、金融引き締めの累積、金融政策が経済活動やインフレ率に影響を与える時間差、経済・金融情勢を考慮に入れます。私たちはインフレ率の低下には、潜在成長率を下回る成長と労働市場の軟化が必要であると考えています。物価の安定を回復することは、長期的な「最大雇用」と物価の安定を達成するために不可欠であります。

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■関連情報(外部サイト)
FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)