金融引締め政策の堅持を再確認=FOMC議事録 2022年10月13日 10時18分

[ゴールデンチャート社] 2022年10月13日

 10月12日、米連邦準備理事会(FRB)は、9月20日、21日の連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公開しました。FOMCは9月21日、連続3回となる0.75%の利上げを決定しました。米国のインフレが依然として沈静化する兆しが見えない中、今回のFOMCでは「インフレはまだ金融引締めにそれほど反応しておらず、インフレの大幅な低下は総需要の低下に遅れる可能性が高い」との認識を確認、「政策金利が十分に引き締まった水準に達した後は、インフレ率が2%の目標に復帰への有力な証拠が得られるまで、その水準をしばらく維持することが適切であろう」との見解を示しました。FOMCメンバーによる経済見通しで示されているように、高金利の水準は2023年末まで維持される見通しとなっています。

FOMC議事録(要旨) 

米国経済の現状と見通しに関する議論

  • 現在の経済状況について参加メンバーは、最近の経済指標が消費と生産の緩やかな伸びを示唆していることに留意しながら、雇用はここ数カ月堅調に推移し、失業率は低水準で推移していることを認識した。インフレ率は、パンデミックに関連した需給の不均衡、食料・エネルギー価格の上昇およびより広範な物価上昇圧力を反映して、依然として高い水準にある。ロシアの対ウクライナ戦争が甚大な人的・経済的困難を引き起こし、戦争とその関連事象がインフレに更なる上昇圧力をもたらし、世界的な経済活動の重荷になっていると判断した。このような背景から、参加メンバーは依然としてインフレリスクに強い関心を示している。
  • 経済見通しにおいて参加メンバーは、最近のデータが今年下半期の経済活動の緩やかな伸びを示唆していること、最近の個人消費と企業投資の指標が緩やかな増加を示唆していることに留意し、金利に敏感なセクターの活動が著しく弱くなっていることが指摘された。参加メンバーは、今年の実質GDP成長率の見通しを前回6月時点の予測から下方修正した。金融引締めスタンスと世界的な逆風が続く中、労働市場の引き締めが弱まり、今年から数年間は米国経済がトレンド以下のペースで成長すると予想している。トレンドを下回る実質GDP成長率は、インフレ圧力を低下させ、最大限の雇用と物価の安定という当委員会の目標を達成するための舞台となると想定している。
  • 家計部門では労働市場の強さ、パンデミック時に蓄積された家計貯蓄の高水準および、家計部門全体のバランスシートの強さを反映して、個人消費が緩やかに増加したとの指摘があった。当委員会の金融政策措置と金融引き締めの効果を反映し、住宅投資やその他の金利感応型消費の顕著な減速が続いていることを確認した。
  • 企業部門については、設備投資の伸びが緩やかであることを確認、数人の参加メンバーは、製造業の活動が鈍化していると述べた。企業は、資金調達コストの上昇、供給のボトルネックに関連した課題、労働市場の逼迫が続くことによる雇用の困難さに直面し、新たな資本投下の実施に制約を受けていると指摘があった。多くの参加メンバーは、供給のボトルネックはもう暫く続きそうだと見ており、生産に対する制約が部品不足ではなく、人手不足の形をとるようになってきているとのコメントもいくつかあった。
  • 参加メンバーは、歴史的に低い失業率、高い求人倍率と退職率、低い解雇率、堅調な雇用増加、高い名目賃金上昇率に見られるように、労働市場は非常にタイトな状態が続いていると見ている。しかしながら、労働市場における需給の不均衡は徐々に解消され、失業率は金融引き締めの効果を反映していくらか上昇すると予想している。賃金や物価の上昇圧力を緩和するためには、労働市場の軟化も必要との判断があり、労働市場の軟化に伴い、失業率も上昇するとの見方が示された。
  • 参加メンバーは、インフレ率が依然として受け入れがたいほど高く、当委員会の長期目標である2%を大幅に上回っていることに留意し、最近のインフレデータは予想を上回っているものの、インフレ率は以前予想していたよりも緩やかに低下しているとコメントがあった。価格上昇圧力は引き続き高く、幅広い製品カテゴリーで持続している。エネルギー価格はここ数カ月で下落したが、2021年よりもかなり高い水準に留まっており、エネルギー価格の上昇リスクは依然として残っている。参加メンバーはインフレ圧力は当面続くと予想し、この見方を裏付ける要因として、労働市場の逼迫とそれによる名目賃金の上昇圧力、サプライチェーンの混乱の継続、サービス価格(特に家賃)の上昇の持続性など、多くの要因を挙げている。
  • 中期的には、インフレ圧力は今後数年で徐々に弱まるだろうとの見方が示された。その要因として、当委員会の引き締め政策、労働市場や製品市場における需給の不均衡の緩やかな緩和、消費需要の低下により企業の利益率が現在の高い水準から低下する可能性などの要因を挙げている。
  • 参加メンバーは、経済見通しに関する不確実性が高く、インフレ見通しに対するリスクは上方に偏っていることに同意した。一部の参加者は、労働争議の高まり、世界的なエネルギー価格の新ラウンド、サプライチェーンのさらなる混乱、賃金上昇の物価上昇への転嫁が予想以上に大きいことなどを、実現すればすでに困難なインフレ問題をさらに悪化させると指摘した。多くの参加者は、賃金ー物価スパイラルはまだ発生していないが、その可能性をリスクとして挙げている。
  • 実質GDPの成長に対するリスクは下方に偏っていると判断し、その要因として様々な世界的な逆風を挙げている。欧州での景気後退リスクの高まり、中国で起きている経済活動の減速、ロシアの対ウクライナ戦争がもたらす世界経済への影響などである。多くの国で進行中の金融引き締めは、世界の金融市場や各国の実質GDPの成長に影響を与え、米国経済にも波及する可能性があると指摘する参加者もいた。

■金融政策の基本スタンス

  • 金融政策における適切なスタンスを検討する中で、参加メンバーは労働市場が非常にタイトであること、インフレ率が当委員会のインフレ目標値2%を大幅に上回っていることに同意した。参加メンバーは、最近の生産と消費の指標が緩やかな成長を指し示している一方で、雇用の増加は堅調であり、失業率は低水準に留まっていることに留意した。このような背景から、全ての参加メンバーは、今回の会合でフェデラルファンド金利の目標レンジを75bp引き上げ、5月に同委員会が公表した「連邦準備制度のバランスシート縮小計画」に記載された連邦準備制度の有価証券保有量の削減プロセスを継続することが適切であるとの見解に同意した。
  • 参加メンバーは、インフレ率を委員会の目標である2%に戻すことへの強いコミットメントを再確認し、多くの参加者は、労働市場が減速してもこの路線を維持することの重要性を強調した。
  • 今後の金融政策について議論する中で、参加メンバーは、当委員会の目的を達成するためには、フェラルドファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であるとした。「最大雇用」と物価の安定を促進するという当委員会の立法上の使命を果たすため、当委員会はより金融引締め政策のスタンスに移行し、それを維持する必要があると判断した。多くの参加メンバーは、インフレ率が当委員会の目標値である2%を大幅に上回り、今のところ収束の兆しが見えないこと、また経済における需要と供給の不均衡が続いていることから、当委員会の目標を達成するために必要と思われるフェデラルファンド金利の今後の見通しを引き上げたと指摘した。参加者は、政策金利の引き上げのペースや程度は、経済活動やインフレの見通しに対する入手情報の意味合いや見通しに対するリスクに依存すると判断している。
  • 参加メンバーは、金融引締め政策が進行するにつれ、経済活動やインフレに対する累積的な金融政策の効果を評価しながら、ある時点で政策金利の引き上げペースを減速させることが適切になるとの見解を示した。多くの参加者は、政策金利が十分に引き締まった水準に達した後は、インフレ率が2%の目標に復帰への有力な証拠が得られるまで、その水準をしばらく維持することが適切であろうと指摘した。また、当委員会のバランスシート縮小計画に沿って、バランスシートの縮小が9月に予定されてる最大ペースまで進み、そのペースで継続されることに留意した。保有する有価証券の大幅な削減は進行中であり、このプロセスが金融引締め政策への移行に寄与しているとの見解が示された。
  • 参加メンバーは現状の金融引締めが、実質金利の大幅な上昇につながったことを認識、住宅や企業の設備投資など金利に敏感な一部の支出はすでに金融引締めに反応し始めたものの、経済活動のかなりの部分はまだあまり反応を示していないと指摘した。また、インフレはまだ金融引締めにそれほど反応しておらず、インフレの大幅な低下は総需要の低下に遅れる可能性が高いと指摘があった。参加メンバーは、実質GDP成長率がトレンドを下回る時期が必要であり、労働市場の軟化を伴う可能性が非常に高いことを確認した。多くの参加メンバーは、インフレ抑制のために取るべきアクションが小さい場合、そのコストは取るべきアクション行動が大きい場合のコストを上回る可能性が高いことを強調した。

(H・N)

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■関連情報(外部サイト)

FOMC議事録(原文、FRB)