経済減速してもインフレ抑制を優先=パウエル議長記者会見スピーチ 2022年09月22日 10時39分

 FRBパウエル議長は9月21日、FOMC直後の記者会見冒頭のスピーチで、0.75%の利上げの背景とFOMC参加メンバーによる「経済・金利見通し」について語りました。今回見通しでは発表された見通しは、前回6月の発表に比べ大幅な修正があり、今年の経済成長率(予測中央値)は0.2%に下方修正され、フェデラルファンド金利(予測中央値)は4.4%に上方修正されています。パウエル議長は、金融引締め政策へのシフトはインフレ抑制策として意図的に実施していることを明言し、「We will keep at it until we are confident the job is done.」(仕事が終ったと確信するまでその政策を続けるでしょう)と強い決意を述べています。

パウエル議長FOMC記者会見冒頭スピーチ(要旨)

[日本語訳 ゴールデンチャート社] 2022年9月22日

  • 本日、当委員会は政策金利を0.75ポイント引き上げる決定したが、今後も適切な引き上げが行われると考えている。私たちはインフレ率を2%に戻すために十分な引締めのスタンスへのシフトを意図的に行っている。また、バランスシートの規模を大幅に縮小するプロセスも継続している。
  • 米国経済は、パンデミック不況後の景気回復を反映した2021年の歴史的な高成長から減速している。最近の経済指標は、消費と生産の緩やかな伸びを指摘している。個人消費の伸びは、実質可処分所得の減少や金融引き締めを一部反映して昨年の急速なペースから鈍化している。住宅部門の活動は、住宅ローン金利の上昇を主な要因として著しく弱くなっている。また、金利の上昇と生産高の伸びの鈍化が企業の設備投資を圧迫し、海外の経済成長の鈍化が輸出を抑制しているようにみえる。6月以降、FOMC参加メンバーは経済活動の予測を下方修正し、実質GDP成長率の予測の中央値は今年がわずか0.2%、来年が1.2%と、長期的な正常成長率の予測の中央値を大きく下回っている。
  • 成長率の鈍化にもかかわらず、労働市場は極めて厳しい状況が続いており、失業率は50年ぶりの低水準に、求人倍率は歴史的な高水準に、賃金上昇率は高水準にある。雇用の増加は堅調で、過去3カ月間の雇用者数は月平均37万8,000人増加。労働市場は依然としてバランスを欠いており、労働者の需要が供給可能な労働者の数を大幅に上回っている。参加メンバーの失業率予測の中央値は、来年末に4.4%に上昇し、6月の予測より0.5ポイント高くなっている。今後3年間、失業率の中央値は長期的な正常値を示す中央値を上回っている。
  • インフレ率は、長期的な目標である2%を大幅に上回る水準で推移している。7月までの12カ月間で、PCE物価指数(総合指数)は6.3%上昇し、変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE物価指数は4.6%上昇した。8月の消費者物価指数(CPI)の12カ月間の変動率は8.3%、コア消費者物価指数(コアCPI)の変動率は6.3%でした。ガソリン価格はここ数カ月で下落に転じたものの、ロシアの対ウクライナ戦争がエネルギーと食料の価格を押し上げ、インフレにさらなる上昇圧力を与えている。参加メンバーのPCEインフレ率の中央値は今年5.4%、2023年2.8%、2024年2.3%、2025年2%と低下しており、参加者は依然としてインフレに対するリスクが上昇に偏っていると見ている。
  • 今後数カ月の間に、私たちはインフレ率が2%への復帰に向け、インフレ率が下降していることの説得力のある証拠を探すことになる。私たちはフェデラルファンド金利の目標レンジを継続的に引き上げることが適切であると想定している。その引き上げのペースは、入ってくるデータと経済の進展する見通しに左右されるだろう。金融政策のスタンスがさらに引き締まるにつれ、ある時点では、累積的な政策調整が経済やインフレにどのように影響しているかを評価しながら、利上げペースを減速させることが適切となるでしょう。私たちは会合ごとに意思決定を行い、私たちの考えをできる限り明確に伝えていく。
  • 物価の安定を回復するには、しばらくの間、引締め政策のスタンスを維持する必要がありそうだ。過去の金融政策の記録は、早まった政策緩和を強く戒めている。今年末のフェラルドファンド金利の適切水準に関する予測の中央値は4.4%で、6月の予測より1ポイント高い。来年末の中央値に4.6%に上昇し、2025年末には2.9%に低下するが、それでも長期的な中央値を上回る水準となっている。もちろん、これらの予測は当委員会の決定や計画を表すものではなく、1年以上先の経済の状況を確実に知っている者はいない。
  • 私たちは需要が供給とより良く調和するよう強力で迅速な手段を講じている。私たちは、私たちのツールを使ってインフレ率を2%の目標に戻し、長期的なインフレ期待の水準に安定させることに包括的な焦点を当てている。インフレ率の低下には、トレンドを下回る成長を持続させることも必要であり、労働市場の状況も軟化する可能性が非常に高いと思われる。物価の安定を取り戻すことは、「最大雇用」と安定した物価を長期的に実現するための布石として欠かせない。私たちは、仕事が終わったと確信できるまで、それを続けるでしょう。

[ゴールデンチャート社]

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FOMC記者会見議事録(FRB原文、PDF)