金融引き締めスタンスを維持=パウエル議長、ジャクソンホールで講演 2022年08月27日 09時53分
[ゴールデンチャート社] 2022年8月27日
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、7月26日、ジャクソンホールで開催された経済シンポジウムで講演し、「物価の安定を回復するには、しばらくの間、金融引締めの政策スタンスを維持する必要ある」との見解を述べました。過去半世紀にわたる金融政策の歴史を振り返り、「はやまった金融緩和を強く戒めています」との教訓を引き合いに出し、物価安定のための金融引き締めに強い決意を語りました。
■パウエル議長、ジャクソンホールで講演(要旨)
- 物価の安定を回復するには時間がかかります。需要と供給のバランスをより良くするために私たちの金融政策としての強力なツールを行使する必要があります。インフレ率を低下させるためには、経済成長のトレンドを下回る成長率を持続させる必要がありそうです。さらに、労働市場の環境も多少軟化する可能性が高いと見ています。金利の上昇、成長率の低下、労働市場の軟化はインフレ率を低下させる一方で、家計や企業にある程度の痛みをもたらすでしょう。これらはインフレを抑制するための不幸なコストです。しかし、物価の安定を取り戻せなければ、もっと大きな痛みを伴うことになるでしょう。
- 米国経済は、パンデミック不況後の経済回復を反映した2021年の歴史的な高成長率から明らかに減速しています。最新の経済データはまちまちですが、私の見方では、米国経済は引き続き強い底力を見せています。特に労働市場は好調ですが、労働者の需要が供給を大幅に上回っており、明らかにバランスが崩れています。インフレ率は2%を大きく上回っており、高いインフレ率は経済全体に広がり続けています。7月のインフレ率の低下は歓迎すべきことですが、1カ月だけの改善では、FOMCがインフレ率が低下していると確信する内容には程遠いものです。
- 7月のフェデラルファンド金利の目標レンジの引き上げは、この数回の会合の中で2回目の75bpの引き上げであり、私は直後に、次回の会合でもう1回異常に大きな引き上げが適切となる可能性に言及しました。現在、次回会合まで期間の約半分が経過しています。9月会合では、収集したデータおよび経済見通しの進展を総合的に判断することになります。金融引締めのスタンスを強めるにつれ、ある時点で金融政策の引き上げペースを緩めることが適切となる可能性があります。
- 物価の安定を回復するには、しばらくの間、金融引締めの政策スタンスを維持する必要がありそうです。歴史は、はやまった金融緩和を強く戒めています。私たちの金融政策の検討と決定は、1970年代と1980年代の高くて不安定なインフレと過去四半世紀の低くて安定したインフレの両面から、インフレの力学について学んだことを基礎にしています。特に、私たちは以下の3つの重要な教訓から学んでいます。
- 現在の高インフレは世界的な現象であり、世界の多くの国々が米国と同等かそれ以上のインフレに直面していることは事実です。また、私の考えでは、米国の現在の高いインフレは強い需要と制約された供給の産物であり、FRBの金融政策は主に総需要に作用させるツールとなっています。
- 1970年代、インフレ率が上昇するにつれて、高インフレ率への期待が家計や企業の経済的意思決定の中に定着していきました。インフレ率が上昇すればするほど、人々はインフレ率が高止まりすると予想するようになり、その確信が賃金や価格決定のプロセスに組み込まれていきました。高インフレが持続した場合、家計や企業はインフレに細心の注意を払い、経済的な意思決定に反映させなければならない。インフレ率が低く安定しているときは、家計や企業の関心は他のことに向けられ、自由となる。インフレは今、誰もが注目していることであり、今日の特別なリスクも浮き彫りになっています。現在の高インフレが長引けば長引くほど、インフレ期待が定着する可能性が高くなります。
- 歴史が示すように、インフレ抑制のための雇用コストは、高インフレが賃金や物価の設定に定着するにつれて、遅れて増大していく可能性が高いのです。1980年代初頭の「ボルカー・ディスインフレーション」は成功しましたが、それ以前の15年間は、インフレを引き下げる試みが何度も失敗した後に起こったものです。高インフレを食い止め、昨年春までのような低位で安定したインフレ水準に引き下げるプロセスの開始までに、最終的には強い引締めの金融政策が長期間必要と考えられます。
- このような教訓をもとに、私たちはインフレを引き下げるための手段を用いています。私たちは、需要が供給とより良く調和するよう、強力かつ迅速な手段を講じており、インフレ期待を安定させるよう努力しています。私たちは、仕事が終わったと確信できるまで、この仕事を続けていきます。
(H・N)
[ゴールデンチャート社]
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■関連情報(外部サイト)
Monetary Policy and Price Stability(原文、FRB)