FRB、利上げへの道筋 2021年11月19日 12時01分

FRB、利上げへの道筋
[ゴールデンチャート社] 2021年11月19日

 11月3日、FRBはテーパリング開始を発表、11月下旬には資産購入額の減額が開始され、順調に行けば2022年年央にはテーパリングは終了する。しかしながら、FRBはテーパリングが終了してもこれまでに購入してきた資産はそのまま保持され、量的緩和状態は維持されるとしている。米国の株式市場は、連日の好調な決算発表に後押しされ10月から11月上旬にかけ株価指数の高値更新が続いた。そうした最中でのテーパリング開始の発表は絶好のタイミングであり、FRBの十分な予告期間と丁寧な説明も奏功し、市場の混乱はなかった。「市場はテーパリングを消化した」と評価され、既に市場の焦点は利上げに移っている。

 パウエル議長は11月3日の記者会見冒頭、「本日、資産購入額の縮小を開始するという決定は、金利政策に関する直接的なシグナルを意味するものではありません。我々は、フェデラル・ファンド金利を引き上げる前に満たす必要のある経済状況については、これまでとは異なるより厳しい検証が必要であることは明確であります」と述べ、利上げに関しても慎重な姿勢を見せている。
 以上の点から利上げ開始時期は、テーパリングの終了以降、2022年夏以降となると推測される。

 利上げの時期と回数を予測する際の重要なファクターとして、インフレ率の動向とFRBが公表するFOMCの「経済・FF金利見通し」の推移がある。

◆インフレ動向
 利上げの決定要因としてインフレ率は最も重要なファクターで、今後インフレ圧力がさらに進行するようであれば利上げ時期が早まり、利上げ回数も増えると考えられる。11月10日米労働省が発表した10月の消費者物価指数をみてみよう。

  • 前月比0.9%の上昇、前年同月比は6.2%の上昇。6.2%は1990年11月以来の大幅な上昇
  • コアCPIでは前月比は0.6%の上昇、前年同月比は4.6%の上昇。1991年8月以来、最大の上昇率
    (コアCPIは食料品とエネルギーを除いたもの)

 サプライチェーンの問題、半導体はじめとする原材料の供給ボトルネックと価格の高騰、原油価格の高騰などが主な要因となっている。根が深い問題ばかりで、早急に沈静化するとは考えにくい。10月の小売売上高は堅調な増加をせ、価格が上がっても米国民の購買意欲は衰えず、このまま年末商戦に突入する気配となっている。前年同月比は前年がコロナ対応で社会が閉塞状態だったとを考慮し割り引いて評価する必要があり、当面は前月比に注目すべきである。

◆FOMC 経済・FF金利見通し
 FOMCの利上げ判断は、FOMC18人のメンバーが提示する「経済・FF金利見通し」をベースに審議される。直近9月にFRBが発表した「FOMCメンバー18人の政策金利の見通し」をみてみよう。


 ( )内は6月発表時点の人数で、9月のFOMCでは利上げ派(タカ派)が増え、現状維持派(ハト派)と拮抗した状態に変化している。単純にこの表から読み取れることは、「FOMCの9月の時点での見解として2022年中に少なくとも1回の利上げが予想される」となる。FRBは通常、1回当たりで0.25%の利上げ(利下げ)を実施する。FRBはインフレが目標とする2%に定着することを前提として、長期的なFF上限金利のコンセンサス値は2.5%となっている。
 次回のFOMCは12月14~15日に開催され、15日には「経済・FF金利見通し」が公表される予定。9月の見通し発表以降、インフレは進行していることから利上げ賛成派がさらに増える公算が高い。以上から2022年秋には利上げが実施される可能性が高まってきたと考えられる。 

(H・N)

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9月22日 FOMC経済・政策金利見通し

11月3日 パウエル議長のオープニング・ステートメント=FOMC記者会見

10月の米国消費者物価指数