11月3日 パウエル議長オープニング・ステートメント=FOMC記者会見 2021年11月05日 09時29分

FOMC終了後記者会見、パウエル議長のオープニング・ステートメント

2021年11月3日

  • 11月下旬より毎月の純資産購入額を財務省証券で100億ドル、政府系不動産担保証券で50億ドルの削減の開始を決定。
  • 来年半ばまでに保有有価証券の増加が停止することになる。
  • フェデラル・ファンド金利をゼロ近傍に維持することを決定。
  • 第3四半期の実質GDP成長率は大幅に減速。今夏のデルタ株感染急増が旅行やレジャーなどパンデミックの影響を最も受けた分野の回復を妨げた。
  • 労働市場は引き続き改善、労働需要は極めて高いレベルを維持するも、パンデミックが要因となり雇用者は求人募集に苦慮している。
  • インフレ率は長期目標である2%を大きく上回っている。供給不足は予想よりも大きく、長引いている。供給のボトルネックやサプライチェーンの混乱により、需要の回復に対応した迅速な生産が阻害されている。
  • 資産購入額の縮小開始の決定は、金利政策に関する直接的なシグナルを意味するものではない。金利を引き上げの際には、これまでとは異なるより厳しい検証が必要。


パウエル議長のオープニング・ステートメント(全文)
 

[日本語訳 ゴールデンチャート社]

 こんにちは。米連邦準備制度理事会(FRB)は、議会から与えられた金融政策目標である最大雇用と物価安定の実現を最大の使命としています。本日、FOMCは金利をゼロ近傍に維持し、経済が目標に向けて進展していることを踏まえ資産購入ペースの減額開始を決定しました。これらの政策行動により、金融政策は引き続き経済回復への強力な支援となります。パンデミックと経済の再開に関連した混乱が前例のないものであることから、私たちはこれまでと同様リスクに注意を払い、幅広い分野に渡って妥当性のある経済的成果が得られるよう対処するため、私たちの政策が適切に位置づけられるようにしていきます。今回の金融政策決定の内容については、最近の経済情勢を再確認した後に述べたいと思います。

 上半期の経済活動は、ワクチン接種の進展、経済の再開、強力な政策支援を反映し、6.5%のペースで拡大しました。第3四半期の実質GDP成長率は、この急速な拡大ペースから大幅に減速しました。夏に発生したデルタ株コロナウィルスの感染急増は、旅行やレジャーなどパンデミックの影響を最も受けた分野の回復を妨げました。また、供給の制約やボトルネックにより自動車産業をはじめとして企業活動が抑制されました。その結果、家計支出と企業投資の両方が直近の四半期で横ばいとなりました。しかしながら、財政・金融政策の支援や家計および企業の健全な財務状況に支えられ、今年の総需要は極めて堅調に推移しています。コロナ感染者数が減少していて、ワクチン接種も進んでいることから、今期の経済成長は回復し、通年でも力強い成長が見込まれます。

 労働市場の状況は引き続き改善しており、労働需要は依然として極めて高いレベルを保っています。経済活動全般と同様、コロナ感染者数の増加に伴い労働市場の改善のペースは鈍化しました。8月と9月の雇用増加数は月平均28万人で、6月と7月の月平均約100万人から減少しました。この減速は、レジャー、接客業務、教育などパンデミックの影響を最も受けやすい分野に集中しています。9月の失業率は4.8%でしたが、特に労働市場への参加率が低迷していることから、この数字は雇用不足を過小評価しています。労働市場への参加率が低調なのは、人口の高齢化と退職を反映しているものと思われます。しかし、働き盛りの人々の労働参加率はパンデミック前の水準を大きく下回っています。これは、介護の必要性やコロナウイルスへの懸念が継続するなど、パンデミックに関連する要因を部分的に反映したものです。その結果、雇用者は求人募集で満足な結果が得られず苦慮しています。このような労働力供給の阻害要因はウイルス対策がさらに進展すれば減少し、雇用の増加や経済活動の活性化につながるはずです。

景気後退はすべての米国人に平等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。景気後退はすべてのアメリカ人に平等に降りかかっているわけではなく、負担能力の低い人々が最も大きな打撃を受けています。景気回復は順調に進んでいるものの、アフリカ系アメリカ人とヒスパニック系アメリカ人には依然として雇用の機会が偏っています。

 パンデミックと経済の再開に伴う需要と供給の不均衡により、一部の分野で大幅な価格上昇が見られました。特に、供給のボトルネックやサプライチェーンの混乱により、短期的には需要の回復に対応した迅速な生産が抑制されています。その結果、全体のインフレ率は長期目標である2%を大きく上回っています。供給不足は予想よりも大きく、長引いています。それにもかかわらず、インフレ率上昇の要因の多くは、パンデミックによる混乱に関連しています。具体的には、操業停止による需給への影響、再開時期のずれ、ウイルス自体の持続的な影響などです。

 私たちは、個人や家族、特に食料や交通手段などの生活必需品の価格上昇を吸収する手段が限られている人々にとって、高いインフレ率がもたらす困難さを理解しています。しかし、私たちFRBのツールでは供給の制約を緩和することはできません。多くの経済予測をする人たちと同様に、私たちはダイナミックな経済が需要と供給の不均衡を調整し、それに伴ってインフレ率が長期目標である2%にかなり近いレベルまで低下すると信じています。もちろん、供給制約の持続性やインフレへの影響を予測することは大変困難であります。

 グローバルなサプライチェーンは複雑です。いずれ通常の機能に戻るでしょうが、その時期は極めて不確実です。

 私たちは、長期的な目標である2%のインフレ率に責任をもっていますが、長期的なインフレ期待はこの目標にしっかりと固定されています。もし、インフレ率や長期的なインフレ期待の動向が、私たちの目標に沿った水準を大きく超えて継続的に変化している兆候が見られた場合には、私たちは物価を安定化させるための手段を用いることになるでしょう。私たちは経済が期待通りに進展しているかどうかを注意深く見守っていきます。

 FRBの政策行動は、米国民のために最大の雇用と安定した物価を促進するという使命と、金融システムの安定を促進する責任に沿ったものです。FRBの資産購入は重要な手段でした。パンデミックの初期には金融の安定に貢献し、それ以降は市場の円滑な機能と緩和的な金融環境の実現を促進して経済を支えてきました。

 昨年12月、当委員会は、最大雇用と物価安定の目標に向けて実質的な進展が見られるまで、毎月少なくとも1,200億ドルのペースで資産購入を継続する意思を表明しました。本日の会合で当委員会は、経済の進展が私たちの検証結果を満たしたと判断し、資産購入のペースの減額開始を決定しました。

 今月下旬より、毎月の純資産購入額を財務省証券で100億ドル、政府系不動産担保証券で50億ドル削減します。また、12月のFOMCに先立ってニューヨーク連邦準備銀行がその月の買い入れスケジュールを発表することから、12月中旬からも同規模の買い入れペースの引き下げを発表しました。経済が概ね予想通りに推移した場合には、純資産の購入ペースを毎月同様に引き下げることが適切であると判断しており、来年半ばまでには保有有価証券の増加が停止することになります。しかし、経済見通しに変化があり、正当な根拠がある場合には、買い入れのペースを調整する用意があります。また、バランスシートの拡大が停止した後も、保有する有価証券は緩和的な金融環境を支え続けるでしょう。

 本日、資産購入額の縮小を開始するという決定は、金利政策に関する直接的なシグナルを意味するものではありません。我々は、フェデラル・ファンド金利を引き上げる前に満たす必要のある経済状況については、これまでとは異なるより厳しい検証が必要であることは明確であります。

 最後に、私たちは、FRBの行動が全米の地域社会、家族、企業に影響を与えることを理解しています。私たちが行うことはすべて、私たちのの公的使命に奉仕するためであります。FRBは、雇用の回復を完了させ、物価安定の目標を達成するためにできる限りのことをしていくつもりです。

 ありがとうございました。皆様からのご質問をお待ちしております。

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