米債務膨張、「持続不可能」に=財政赤字、10年後に6割増―健全化の道筋描けず 2024年02月10日 15時20分

 【ワシントン時事】米国の政府債務が膨らみ続けている。議会予算局(CBO)は財政赤字が10年後の2034年度に6割増え、債務の国内総生産(GDP)比は116%と過去最悪になると予測。「持続不可能」との懸念も出るが、11月の大統領選を前に議会与野党の対立が激化し、財政健全化の道筋を描く機運は盛り上がらない。
 「財政の持続性を回復させるのは早い方がいい。緊急の課題だ」。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は4日のテレビインタビューで、政府債務が「持続不可能な道」をたどっていると警告した。政府の財政政策にあまり触れない議長が債務懸念にここまで言及するのは異例だ。
 財政赤字が拡大し続けるのは、FRBの利上げで金利が上昇し、国債利払い費が増えていくからだ。米国の信用格付けにも影響し、基軸通貨であるドルの地位を揺るがしかねない。
 米財政は、01年度は黒字で債務GDP比も30%台と健全さを保っていた。だが、共和党のブッシュ(子)、トランプ政権下の大型減税、民主党のバイデン現政権でのコロナ危機対応の巨額財政出動が債務膨張を招いた。CBOによると、財政赤字額は24年度の1兆5820億ドル(約236兆円)から34年度には2兆5570億ドル(約382兆円)と6割増える見通しだ。
 財政健全化策について、バイデン政権は富裕層や大企業への課税強化で歳入増を目指す一方、共和党は歳出削減を主張。大統領選を控え、痛みを伴う改革で与野党が歩み寄りそうもない。
 米国債は世界中の投資家が安全資産として保有する。イエレン財務長官は8日の議会証言で「現時点で(金融市場に動揺の)兆しはない。米国債は最も安全だ」と強調した。ただ「財政は持続可能性を維持する必要がある」とも述べ、議会に財政健全化へ行動を起こすよう訴えた。 

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