【2024年7月30日~31日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2024年08月08日 13時39分

金融政策決定会合における主な意見(2024年8月8日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
  • 春季労使交渉の結果が賃金に反映されてきているなど、経済・物価はオントラックである。
  • 個人消費は決して強くないが、この先春季労使交渉の結果の賃金への反映がさらに進むこと、夏季賞与が好調であることに加えて、定額減税等もあり、底堅い動きが続くとみられる。
  • 個人消費はマクロでは力強さに欠けるが、ミクロでみれば強弱があり、必ずしも弱さだけではない。
  • 名目賃金の伸びを上回る物価上昇により、実質賃金の低下が続くなか、個人消費などに弱さがみられる。名目賃金上昇のモメンタムが維持される限り、時間の経過とともに経済状況は改善すると思われるが、足もとは、賃金上昇の波が幅広く浸透し、その持続可能性が高まることを見守る忍耐が重要な局面にある。
  • 実質金利のマイナスの長期化が、家計などの資金の出し手から、実質負担減となる資金の受け手への所得移転をもたらす面があることを意識して、金融経済情勢を確認していく必要がある。
  • 新しい環境への適応度に応じ企業間の差が大きくなっており、全体の動きだけでは経済の実態を捉えにくくなっている。
  • 日本経済の構造的問題は、少子高齢化による消費低迷と低収益化した産業構造にある。今後、新NISAによる金融資産所得の持続的増加が消費を刺激するとともに、国際競争力の高い事業の育成が産業集積と輸出拡大に繋がり、成長志向の中堅・中小企業の能増投資や雇用の拡大に波及すると期待される。


(2)物価

  • 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
  • 中長期の予想インフレ率の上昇や春季労使交渉の結果が統計に反映され始めたこと等を勘案すると、賃金と物価の好循環が働きだしたと考えられ、基調的な物価上昇率は2%に向けて着実な歩みをみせている。
  • 物価目標の実現の確度はさらに高まった。ただし、人手不足の結果、供給不足・需要超過の業種が増えており、物価の上振れリスクに注意する必要がある。
  • 海外のインフレやこれまでの円安による輸入物価の上昇に加え、タイトな労働需給や、労働時間の上限規制の影響もあり、価格上昇圧力が続くと考えられる。
  • 2%を超える物価上昇が3年目となるなか、「物価安定の目標」の厳密な意味での実現とは別に、家計を中心に「目標」実現が従来よりも意識されてきていることを認識する必要がある。

2.金融政策運営に関する意見

  • 経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しているほか、輸入物価は再び上昇に転じており、物価の上振れリスクには注意する必要もある。「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である。
  • 3月の政策変更以降、経済・物価は概ね想定通りに推移している。足もとの経済の状態は、現在の極めて低い政策金利を幾分引き上げることができる程度には良いと考えている。
  • 実質金利は過去 25 年間で最も深いマイナスとなっており、様々な指標でみた金融緩和の度合いは、量的・質的金融緩和期の平均的な水準を大きく上回っている。
  • 金利を引き上げたとしても、0.25%という名目金利は引き続き極めて緩和的な水準であり、経済をしっかりと支えていく姿勢に変わりはない。
  • 金融政策の正常化が自己目的になってはならず、今後の政策運営については、注意深く進めていく必要がある。
  • 足もとの物価を取り巻く環境を踏まえると、小幅な利上げを検討してもよい時期だと考える。なお、緩やかなペースの利上げは基調的な物価の上昇に応じて緩和の程度を調整するものであり、引き締め効果を持たない。
  • 2025年度後半の「物価安定の目標」実現を前提とすると、そこに向けて、政策金利を中立金利まで引き上げていくべきである。中立金利は最低でも1%程度とみているが、急ピッチの利上げを避けるためには、経済・物価の反応を確認しつつ、適時かつ段階的に利上げしていく必要がある。
  • 今回の政策変更後も、物価が見通しに沿って推移するもと、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続といった前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度、金融緩和の一段の調整を進めていくことが必要である。
  • 現状は、政策金利の引き上げがまったく不可能とは捉えていないが、経済成長率や消費など下振れ気味のデータが多いため、賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある。
  • 現時点では経済の持続的成長を裏付けるデータが少ないため、次回会合で重要な経済データを点検して変更を判断すべきで、今次会合での利上げについては反対する。
  • 長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能な形で減額していくことが適切である。
  • 市場に金利形成を委ねるため、基本的には計画に沿って、国債買入れの減額を淡々と進めていくべきである。
  • 国債買入れの減額計画の目的は、あくまでも市場領域の回復であり、金融引き締めにあるのではない。
  • 国債買入れの減額は緩やかなペースで着実に実施していくことが望ましい。債券市場参加者会合の結果から、市場の減額への見方には相応にばらつきがみられるため、予想形成が一方向に偏ることによる市場の混乱のリスクは高くないと考える。
  • 国債買入れ減額については、1年半強かけて四半期毎に月3兆円程度まで等速で減額することとし、機動的対応の余地を残し中間評価を実施するなど、慎重に進めれば、市場にサプライズを起こさず実施可能と思われる。
  • 今後、長期金利がより自由な形で形成されるようになるなかで、国債市場の投資家層が広がっていくことを期待している。
  • 仮に国債買入れの減額を市中への国債供給の増加という点で新規発行と同等と捉えると、今回の減額により、歴史的にも有数の大量発行局面を迎えると考えられる。国債の保有構造の在り方を念頭に、市場や投資家動向をモニタリングしていくことが重要である。
  • 日本銀行のバランスシート正常化の道のりは長く、国債大量保有に伴う副作用が残り続けてしまう。引き続き、市場機能の状況等を注意深く見ていく必要がある。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 政府は「骨太方針 2024」に基づき、経済再生と財政健全化の両立をしっかりと進める。
  • 国債買入れの減額は、債券市場の安定等に十分に配慮しつつ適切に行われることを期待する。政策金利の変更は、2%の物価安定目標の実現に向けて必要と判断されたものと受け止めており、政策の趣旨の対外的に丁寧な説明を期待する。
  • 日本銀行には、政府との密接な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

(2)内閣府

  • 国債買入れ減額の実施にあたっては、マーケットとの適切なコミュニケーションのもと、必要があれば、状況に応じた柔軟な対応をお願いしたい。政策金利の引き上げは、金融資本市場や実体経済に不測の影響が出ることのないよう、政策の趣旨を対外的に丁寧に説明いただきたい。
  • 日銀には、引き続き政府との緊密な連携のもと、賃金と物価の好循環を確認しつつ、2%の物価安定目標の持続的・安定的実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。

以上


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

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主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2024年7月30日、31日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)