【2024年7月30日~31日】総裁定例記者会見(一部抜粋・要約) 2024年08月01日 16時53分
総裁記者会見一部抜粋・要約(2024年8月1日)
1.今回の決定内容について
- 金融市場調節方針の変更および長期国債買入れの減額計画を決定した
- まず、金融市場調節方針について、政策金利である無担保コールレート・オーバーナイト物の誘導目標を、これまでの 0~0.1%程度から0.25%程度へと変更した
- また、これに伴い、補完当座預金制度や補完貸付制度等の適用利率を変更したほか、貸出増加支援資金供給については、今後、変動金利貸付に変更のうえ、実施することとした
- なお、中村委員は、「次回の金融政策決定会合で法人企業統計等を確認してから金融市場調節方針の変更を判断すべきであり、今回はそうした考え方を示すにとどめることが望ましい」として、また、野口委員は、「賃金上昇の浸透による経済状況の改善をデータに基づいてより慎重に見極める必要がある」として、金融市場調節方針等に反対した
- 次に、国債買入れの減額について、月間買入れ予定額を原則として、毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度とするという計画を全員一致で決定した
2.国債買入れの減額計画について
- 日本銀行は、長期金利は金融市場において形成されることが基本であり、国債の買入れは、国債市場の安定に配慮するための柔軟性を確保しつつ、予見可能なかたちで減額していくことが適切であると考えており、こうした観点から、前回会合で買入れの減額方針を決定し、その後、債券市場参加者会合などで市場参加者の意見も確認してきた
- そのうえで、本日の決定会合において、月間の買入れ予定額を、原則として毎四半期4,000億円程度ずつ減額し、2026年1~3月に3兆円程度とすることとした
- また、来年6月の決定会合では、減額計画の中間評価を行う。中間評価では、今回の減額計画を維持することが基本となるが、国債市場の動向や機能度を点検したうえで、必要と判断すれば、適宜計画に修正を加える方針。また、そのとき同時に、2026年4月以降の国債の買入れ方針について検討し、その結果を示すこととする。
- このほか、従来と同様、長期金利が急激に上昇する場合には、毎月の買入れ予定額にかかわらず、機動的に買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。必要な場合には、金融政策決定会合において、減額計画を見直すこともあり得ると考えている。
3.国内の経済・物価について
- わが国の景気の現状は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断した。先行きについては、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
- 前回のレポートと比較すると、24年度の見通しが幾分下振れているが、これは前年度の統計改定の影響が主因であり、景気に対する見方に変わりはない
- 物価の先行きは、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、2024年度に2%台半ばとなった後、25年度および26年度は、概ね2%程度で推移すると予想している。前回と比較すると、24年度が下振れ、25年度が上振れとなっているが、これは政府のエネルギー価格関連の政策の影響が主因。
- この間、消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想さる。見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えている。
4.長期国債の買入れ減額について、債券市場参加者会合の参加者からは、減額の幅やペースについて幅広い意見が出たが、この内容をどのように踏まえて今回の決定に至ったのか、そのプロセスについて
- 債券市場参加者会合では、国債買いオペ減額の幅やペース、買入れ金額の示し方、臨時オペ・指値オペの位置付けなどについていろいろご意見を頂き、それらは、今回の減額計画にも反映されている
- すなわち、先行きの国債買入れの予見可能性を求める声が強かったということを受けて、一つには2026年3月までの各四半期毎の買入れ予定額を具体的に示すということにしたし、また、残存期間別等の買入れ予定額についても、レンジではなく、ピンポイントで示すことにした
- 一方で、市場参加者からは、先行きの市場環境等についての懸念も少なからず窺われた。この点も踏まえ、中間評価の実施など、国債市場の安定に配慮するための柔軟性も確保することとした。
- このように、市場参加者の意見を丁寧に確認することで、市場の現状と先行きを踏まえた、しっかりとした減額計画を決定することができたと考えている
5.追加利上げに関して、3月の決定会合でマイナス金利政策を解除してから約4か月で今回政策金利の追加の引き上げを決めた背景となる基調的な物価や経済の動向についての現状認識と、懸念材料として個人消費の弱さを指摘する声などがあることについて
- 今回の政策金利引き上げの背景ですが、まず、個人消費は、物価上昇の影響などがみられるが、底堅く推移していると判断している。最近では、マインド指標にも底入れの兆しが窺われる。また、5月の毎月勤労統計では、一般労働者の所定内給与が伸び率を高めたほか、私ども本支店のネットワークを活用して、中堅・中小企業に対して実施したヒアリングでも、幅広い地域・業種・企業規模において、賃上げの実施を指摘する声が聞かれるなど、賃上げの動きが広がってきていることが確認できる。先行き、こうした動きが一段と進むことが見込まれ、賃金・所得の増加が個人消費を支えていくと判断している。
- 物価面ですが、サービス分野を中心に、年度初めの「期初の値上げ」が相応に広がったことが確認されたと考えている。企業ヒアリングでも、ばらつきを伴いつつも、賃金上昇を販売価格に反映する動きが強まってきている点が指摘されていて、先行きも、賃金と物価が連関を高めつつ、緩やかに上昇していくと見込まれる。
- このように、わが国の経済・物価は、これまで展望レポートで示してきた見通しに概ね沿って推移している。また、加えて、これまでの為替円安もあって、輸入物価が再び上昇に転じており、物価の上振れリスクには注意する必要もあると考えている。
- こうした状況を踏まえ、物価安定目標の持続的・安定的な実現という観点から、今回、政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整することが適切であると判断した。先行きについても、経済・物価情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく方針。
[ゴールデン・チャート社]
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総裁記者会見要旨(2024年7月30日、31日開催分)(日本銀行)