【2023年7月27日~28日】金融政策決定会合の結果(要約) 2023年07月28日 17時28分
前回(2023年6月16日公表)との比較まとめ
1.長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
長短金利操作の修正を決定。長期金利の上限を1.0%まで引き上げ。
①次回金融政策決定会合までの金融市場調整方針
【短期金利】日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。
【長期金利】10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買入れ。
②長短金利操作の運用
長期金利の変動幅を「±0.5%程度」とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。上記の金融市場調整方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。
2.資産買入れ方針
前回会合から据え置き。
【ETF】年間約12兆円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。
【J-REIT】年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。
【CP等、社債等】CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。
3.日本の経済・物価の状況
- 物価は、4月の展望レポートの見通しを上回って推移
- 本年の春季労使交渉などを背景に、賃金上昇率は高まっている
- 企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが窺われ、予想物価上昇率も再び上昇する動きがみられる
- グローバルな金融環境のタイト化が海外経済に及ぼす影響を含め、わが国経済・物価の下振れリスクも高い
4.その他
- 賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく
- マネタリーベースは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続
- 引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる
■当面の金融政策運営について(2023年7月28日)
1.日本銀行は、本日の政策委員会・金融政策決定会合において、長短金利操作の運用を柔軟化することを決定した。わが国の物価情勢を展望すると、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現を見通せる状況には至っておらず、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで、粘り強く金融緩和を継続する必要がある。そうした中、経済・物価を巡る不確実性がきわめて高いことに鑑みると、長短金利操作の運用を柔軟化し、上下双方向のリスクに機動的に対応していくことで、この枠組みによる金融緩和の持続性を高めることが適当である。
長短金利操作、資産買入れ方針については以下のとおりとする。
(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)
①次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする(全員一致)。
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
②長短金利操作の運用(賛成8反対1)(注)
長期金利の変動幅は「±0.5%程度」を目途とし、長短金利操作について、より柔軟に運用する。10年物国債金利について1.0%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。上記の金融市場調節方針と整合的なイールドカーブの形成を促すため、大規模な国債買入れを継続するとともに、各年限において、機動的に、買入れ額の増額や指値オペ、共通担保資金供給オペなどを実施する。
(2)資産買入れ方針(全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
①ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
②CP等は、約2兆円の残高を維持する。社債等は、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(約3兆円)へと徐々に戻していく。ただし、社債等の買入れ残高の調整は、社債の発行環境に十分配慮して進めることとする。
2.海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
わが国の物価は、4月の展望レポートの見通しを上回って推移しており、本年の春季労使交渉などを背景に、賃金上昇率は高まっている。企業の賃金・価格設定行動に変化の兆しが窺われ、予想物価上昇率も再び上昇する動きがみられる。今後も上振れ方向の動きが続く場合には、実質金利の低下によって金融緩和効果が強まる一方、長期金利の上限を厳格に抑えることで、債券市場の機能やその他の金融市場におけるボラティリティに影響が生じるおそれがある。長短金利操作の運用の柔軟化によって、こうした動きを和らげることが期待される。
一方、グローバルな金融環境のタイト化が海外経済に及ぼす影響を含め、わが国経済・物価の下振れリスクも高い。下振れリスクが顕在化した場合には、長短金利操作の枠組みのもとで、長期金利が低下することで、緩和効果が維持されることになる。
3.日本銀行は、内外の経済や金融市場を巡る不確実性がきわめて高い中、経済・物価・金融情勢に応じて機動的に対応しつつ、粘り強く金融緩和を継続していくことで、賃金の上昇を伴う形で、2%の「物価安定の目標」を持続的・安定的に実現することを目指していく。
「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。引き続き企業等の資金繰りと金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。
以上
[ゴールデン・チャート社]
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前回(6月15日~16日開催)金融政策決定会合の結果(要約)
経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら
■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合の結果「当面の金融政策運営について」(日本銀行)