【2022年6月16日~17日】金融政策決定会合の結果(要約) 2022年06月17日 14時43分
前回(2022年4月28日公表)との比較まとめ
1.金融市場調整方針
長短金利操作について、前回会合から据え置き。
【短期金利】日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用。
【長期金利】10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債を買入れ。
上記の金融市場調整方針を実現するため、10年物国債金利について0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。
2.資産買入れ方針
前回会合から据え置き。
【ETF】年間約12兆円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。
【J-REIT】年間約1,800億円の残高増加ペースを上限に必要に応じて買入れ。
【CP等、社債等】感染症拡大前のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく。
3.経済の現状
- 国内景気は、基調としては持ち直している
- 海外経済は、総じてみれば回復している
- 輸出や鉱工業生産は、基調としては増加を続けているが、足もとでは、供給制約の影響が強まっている
- 企業の景況感は、このところ改善が一服している
- 企業収益は、全体として高水準で推移している
- 設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している
- 雇用・所得環境は、全体としてなお弱めとなっている
- 個人消費は、サービス消費を中心に持ち直している
- 住宅投資は、横ばい圏内の動きとなっている
- 公共投資は、弱めの動きとなっている
- 金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある
- 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、エネルギーや食料品の価格上昇を主因に2%程度となっている
- 予想物価上昇率は、短気を中心に上昇している
4.経済の展望
- 国内経済は、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、回復していくとみられる。その後は、資源高のマイナスの影響が減衰し、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
- 消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格や食料品の価格上昇の影響により、2%程度で推移するとみられる。その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。その間、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
5.その他
- 「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続
- マネタリーベースは、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続
- 新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる
- 政策金利は、現在の長短金利の水準かそれを下回る水準での推移を想定
■当面の金融政策運営について(2022年6月17日)
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、以下のとおり決定した。
(1)長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)(賛成8反対1)(注1)
①次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針は、以下のとおりとする。
短期金利:日本銀行当座預金のうち政策金利残高に▲0.1%のマイナス金利を適用する。
長期金利:10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買入れを行う。
②連続指値オペの運用
上記の金融市場調節方針を実現するため、10年物国債金利について 0.25%の利回りでの指値オペを、明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日、実施する。
(2)資産買入れ方針(全員一致)
長期国債以外の資産の買入れについては、以下のとおりとする。
①ETFおよびJ-REITについて、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて、買入れを行う。
②CP等、社債等については、感染症拡大前と同程度のペースで買入れを行い、買入れ残高を感染症拡大前の水準(CP等:約2兆円、社債等:約3兆円)へと徐々に戻していく。
2.わが国の景気は、新型コロナウイルス感染症や資源価格上昇の影響などから一部に弱めの動きもみられるが、基調としては持ち直している。海外経済は、一部に弱めの動きがみられるものの、総じてみれば回復している。輸出や鉱工業生産は、基調としては増加を続けているが、足もとでは、供給制約の影響が強まっている。企業の業況感は、供給制約や資源価格上昇の影響などから、このところ改善が一服している。企業収益は全体として高水準で推移している。設備投資は、一部業種に弱さがみられるものの、持ち直している。雇用・所得環境は、一部で改善の動きもみられるが、全体としてはなお弱めとなっている。個人消費は、感染症の影響が和らぐもとで、サービス消費を中心に持ち直している。住宅投資は横ばい圏内の動きとなっている。公共投資は弱めの動きとなっている。わが国の金融環境は、企業の資金繰りの一部に厳しさが残っているものの、全体として緩和した状態にある。物価面では、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、携帯電話通信料の引き下げの影が剥落するもとで、エネルギーや食料品の価格上昇を主因に、2%程度となっている。また、予想物価上昇率は、短期を中心に上昇している。
3.先行きのわが国経済を展望すると、ウクライナ情勢等を受けた資源価格上昇による下押し圧力を受けるものの、新型コロナウイルス感染症や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していくとみられる。その後は、資源高のマイナスの影響が減衰し、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まっていくなかで、わが国経済は、ペースを鈍化させつつも潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギーや食料品の価格上昇の影響により、2%程度で推移するとみられるが、その後は、エネルギー価格の押し上げ寄与の減衰に伴い、プラス幅を縮小していくと予想される。この間、消費者物価(除く生鮮食品・エネルギー)の前年比は、マクロ的な需給ギャップが改善し、中長期的な予想物価上昇率・賃金上昇率も高まっていくもとで、原材料コスト上昇の価格転嫁の動きもあって、プラス幅を緩やかに拡大していくとみられる。
4.リスク要因をみると、引き続き、内外の感染症の動向やその影響、今後のウクライナ情勢の展開、資源価格や海外経済の動向など、わが国経済を巡る不確実性はきわめて高い。そのもとで、金融・為替市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。
5.日本銀行は、2%の「物価安定の目標」の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する。マネタリーベースについては、消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、拡大方針を継続する。
当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めるとともに、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している(注2)。
以上
(注1)賛成:黒田委員、雨宮委員、若田部委員、鈴木委員、安達委員、中村委員、野口委員、中川委員。反対:片岡委員。片岡委員は、コロナ後を見据えた企業の前向きな設備投資を後押しする観点から、長短金利を引き下げることで、金融緩和をより強化することが望ましいとして反対した。
(注2)片岡委員は、財政・金融政策の更なる連携が必要であり、日本銀行としては、政策金利のフォワードガイダンスを、物価目標と関連付けたものに修正することが適当であるとして反対した。
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合の結果「当面の金融政策運営について」(日本銀行)