【2021年4月26日~27日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年05月11日 09時00分
金融政策決定会合における主な意見(2021年5月11日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
- わが国経済は、感染症の影響が対面型サービス消費を下押ししているが、製造業を中心に持ち直している。
- 日本経済は、好調な外需などに支えられて持ち直しているものの、ワクチンの普及ペースや効果に不確実性があるもとで、感染症の再拡大による景気の下振れリスクには引き続き注意が必要である。
- わが国経済は、感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直しの動きが続いている。ただし、4都府県を中心に公衆衛生措置が強化される中で、感染症の帰趨と、経済・物価の下振れリスクには注意する必要がある。
- わが国経済は、海外経済の回復から、外需中心の回復経路を辿るとみられるが、感染症やワクチン接種の動向など、先行き不透明感は強い。
- わが国経済は、対面型サービスを中心に感染症に左右される状況は続くものの、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、回復していくと考えられる。
- ワクチン普及後に感染症がある程度収束すれば、これまで抑制されてきた消費需要の顕在化等が、日本経済の持続的な回復に繋がる可能性がある。
- 企業部門における前向きの循環メカニズムが徐々に働き始めており、感染症の影響が収束していけば、経済全体での好循環が強まり、わが国経済はさらに成長を続けると見込まれる。
- 家計の現・預金残高は、この1年間で約 50 兆円増加しており、感染症の影響が収束すれば、サービス消費でも大きなペントアップ需要が生じるとみられる。
- わが国経済の見通しについては、当面は、足もとでの変異株の流行や緊急事態宣言の発出を含め、感染症の影響を中心に、下振れリスクの方が大きいものの、見通し期間の中盤以降は概ね上下にバランスしている。
- 今年度については、ワクチン接種の進展や感染症の帰趨などには高い不確実性が残っており、リスクは依然として下方に厚いと判断している。
- 海外でワクチン接種が進む中、わが国での接種が順調に進まないことになれば、経済成長の面でも取り残されていくことが懸念される。
- 世界経済は回復基調にあるが、ワクチン接種、政策対応の相違を映じて、地域・業種別の回復の違い、不均一性といったK字回復の様相が強い。また、回復の息切れ、政策の時期尚早な打ち切り、政治・地政学リスクも相応にある。
- 日本経済を早期に成長軌道に戻すためには、消費者マインドの悪化や金融市場の変調を食い止めつつ、ワクチンの接種を加速していくことが重要である。
- 業績回復を受けて企業の成長や変革に向けた取組みが先送りされると、中長期の経済成長や物価安定の実現に悪影響が生じかねない。
- 米国における特別買収目的会社のリスク顕現化や、ファミリーオフィスと呼ばれる投資主体の破綻について、類似の事例が続くことがないか注視が必要である。
(2)物価
- 消費者物価の前年比は、当面、小幅のマイナスで推移した後、経済の改善が続き、携帯電話通信料の引き下げの影響が剥落することから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていく。
- 企業が値下げにより需要を喚起する動きは広範化しておらず、先行き、物価の底堅い動きが続く中、経済の改善とともに、徐々に物価上昇率は高まっていくとみている。
- 付加価値の減少に繋がる値下げの動きが拡がっている状況にはないが、そうした動きが拡がるリスクに注意が必要である。
- 物価は、当面は前年比マイナスが続くとみられる。既往のデフレの経験に基づく根深い適合的期待形成の影響もあって、物価上昇のペースは力強さに欠けるとみられる。
- 早期の物価上昇に臨む種火を残しておくためには、現下のような厳しい経済環境にあっても賃金の安定的な上昇が確保されるとの経験を通じて、賃金上昇期待が維持されることが必要である。
2.金融政策運営に関する意見
- 企業の資金繰りにはなお厳しさがみられており、金融市場では引き続き様々な不確実性が意識されている。効果を発揮している「3つの柱」による金融緩和により資金繰り支援と市場の安定維持に努めることが重要である。
- 都府県を対象に緊急事態宣言が再々発出されるなど、わが国では対面型サービスセクターを中心に改めて下押し圧力がかかっている。当面の金融政策運営については、こうした情勢を総合的に勘案し、しっかりと感染症の影響への対応に集中することが適当である。
- 本年9月末に期限を迎える「新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム」の延長については、企業金融の環境変化などを踏まえつつ、議論を進めていく必要がある。
- 当面は、感染症の収束、さらには経済の正常化に向けて、金融・財政政策の両面から、粘り強く支援を継続する必要がある。
- 感染症収束まではワクチン接種が最良の経済政策であるが、マクロ経済政策の支えも依然として重要である。現在の政策フレームワークの下では、財政政策と金融政策の緊密な連携・協調が「物価安定の目標」に寄与する。
- 市場動向を見ると、3月の決定について、政策の持続性・機動性を高めるという意図は誤解なく浸透したと考えている。
- 3月の政策対応に対する市場の反応は総じて落ち着いたものであったほか、金融機関の受け止め方も概ね想定していた範囲内のものであったとみている。
- 「物価の安定」の実現には、「金融システムの安定」が前提となる。この点、金融システムは、全体として安定性を維持しており、金融仲介機能は円滑に発揮されている。今回から金融機構局の報告を受けることになったが、決定会合で金融システムの動向を定点観測する意義は大きい。
- 感染症収束後に向けて、2%の物価安定目標に向けた道筋について引き続きしっかりと考えなければならない。コミットメントとともに、国民各層に金融政策への理解を促進する効果的なコミュニケーションがきわめて重要である。
- 「物価安定の目標」の達成は容易ではないからこそ、金融政策運営においては、先行きの景気回復という追い風をうまく捉えて、金融緩和を強めることで、目標達成につなげることが必要ではないか。
- 現在、各国の大規模な財政対応が、マクロ経済に大きな影響を与えつつある。中長期的には、安定的な成長の実現に向けて金融・財政政策をどのように調整していくか、政府とより緊密に連携しつつ考えていく必要がある。
- 感染症を契機に経済のデジタル化がさらに加速し、有形資産から無形資産へのシフトが進むことで、金融経済や金融政策の効果にどのような影響がもたらされるか、さらに理解を深めていく必要がある。
- 気候変動は、経済や金融システムにも影響する重要な要素であり、引き続き行内連携を強化し、中央銀行のマンデートに即して、必要な対応を検討することが重要である。
3.政府の意見
(1)財務省
- 政府としては、3月26日に成立した令和3年度予算の着実な執行等により、感染症に引き続き適切に対応する。
- また、デジタルやグリーン等の分野で民間投資を大胆に呼び込みながら、経済構造の転換を図り、生産性を向上させ、持続的な賃金上昇を通じて、経済の好循環を実現していく。
- 日本銀行には、政府との連携の下、感染症への対応をはじめ、必要な措置を適切に講じることを期待する。
(2)内閣府
- 政府は4都府県に緊急事態宣言を発出し、飲食対策の徹底や人流の抑制により、何としても感染拡大を抑えていく。
- 厳しい影響を受ける方には、大規模施設等への新たな協力金や地方創生臨時交付金の増額を通じた支援など、重点的・効果的な支援策を講じる。
- 今後も感染状況や経済・国民生活への影響を踏まえ、必要に応じ、予備費5兆円の活用を含め、迅速・機動的に対応していく。日本銀行には、引き続き緊密な連携をお願いする。
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2021年4月26、27日開催分)(日本銀行)