【2021年3月18日~19日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年03月29日 09時00分
金融政策決定会合における主な意見(2021年3月29日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
- わが国では、外需に牽引されて輸出や生産の堅調が続いており、感染症拡大前の時期から水準低下がみられていたトレンドが、ここへきて局面変化を起こしている可能性がある。
- 先行きのわが国経済は、感染症の影響が徐々に和らいでいくもとで、改善基調を辿るとみられる。もっとも、目先は、対面型サービス消費における下押し圧力は続くとみられる。
- わが国経済は、当面、対面型サービス業とそれ以外の二極化が続くが、感染症が収束に向かうのに伴い、徐々に改善すると見込まれる。
- わが国の景気は、海外経済が持ち直すもとで、改善基調にあるが、感染症の影響などから下振れリスクは大きい。
- 先行き内外で感染症が収束に向かう前提のもとで、わが国経済は緩やかに回復するとみられるが、感染症の帰趨には不確実性が大きく、下振れリスクに注意を要する。
- 内外経済は、変異株の動向等、感染症による不確実性は残るものの、業況の悪化がみられる業種が拡がる兆しはみられておらず、下振れリスクは抑制されている。
- 米国長期金利の急上昇を懸念する向きもあるが、わが国と同様に預貸率と貸出利鞘の低下が進んだ銀行による債券需要が旺盛になることで、そうした上昇は限定的となる可能性がある。
(2)物価
- 消費者物価の前年比は、当面、マイナスで推移した後、経済が改善し、原油価格下落の影響なども剥落していくことから、プラスに転じ、徐々に上昇率を高めていく。
- 消費者物価の前年比は、エネルギー価格などの一時的なマイナス要因を除けば、小幅のプラスを維持しており、経済の落ち込みに比べると底堅い動きが続いている。
- 付加価値の減少に繋がる値下げの動きは拡がっていないが、物価の低迷が長引くリスクに注意が必要である。
- 欧米においてはインフレ率の上昇を警戒する議論がみられており、わが国でもアフターコロナの物価動向については、上下両方向のリスクを丁寧に検証する必要がある
- 先行き経済は回復するものの、引き続きわが国の物価の動きは弱いとみている。インフレ予想は弱含んでおり、賃金も上がりにくく、各種部門ショックが物価を当面下押しするリスクが大きい。欧米とは異なり、日本ではインフレリスクよりも依然としてデフレリスクの方が高い。
2.金融政策運営に関する意見
(1)感染症の影響への対応
- 当面は、感染症の影響への政策対応をしっかり続けていくことが重要である。
- 引き続き、企業等の資金繰りを支援し、金融市場の安定を確保すべきである。
(2)点検関係:総論
- 「点検」の結果を踏まえると、「物価安定の目標」の実現のためには、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」の枠組みのもとで、強力な金融緩和を継続していくことが適当である。
- 今回の対応は、政策の持続性を高めるほか、機動的かつ効果的に対応できるようになる点で、金融緩和の枠組みの強化になる。
- 「点検」での政策効果の分析によって、現行の金融緩和を長期的に継続すべきであることが確認された。今回の政策対応によって、「物価安定の目標」の実現のために必要な政策の持続可能性と機動性が確保できたことは大きい。この政策枠組みが、今後数年間、金融緩和政策の基本的指針となることを期待する。
- 極めて緩和的な金融環境を今後も長期に亘り維持する必要があると同時に、現在の政策の枠組みを一段と安定的に維持できる形にしておくことが、将来に亘り金融緩和を約束するうえで重要である。
- 早期に「物価安定の目標」を達成することが、金融緩和の副作用を抑える最善の処方箋である。追加緩和に際して副作用が懸念されるのであれば、その緩和措置を予め示すことも考えられる。
(3)点検関係:イールドカーブ・コントロールの運営
- 金融仲介機能への影響に配慮しつつ、機動的に長短金利の引き下げを可能にする「貸出促進付利制度」は、利下げの可能性を限定的にみている市場参加者の認識を改めてもらううえでも有効である。
- 副作用への対応の観点から、金利引き下げ時の対応を具体的に明記することや、長期金利の変動幅を緩和政策と整合的な範囲で明示することで、透明性を高める必要がある。
- 長期金利が上下 0.25%程度動きうるフレキシビリティは、収益機会が失われていたアービトラージャーやスペキュレーターが債券市場から退出することを防ぎ、市場が持つ価格安定化機能を維持する観点からも望ましい。
- 長期金利の変動幅の上限については、新たに導入する「連続指値オペ制度」も駆使して、厳格に対応することが適当である。
- 感染症の影響が続くもとで、当面は、イールドカーブ全体を低位で安定させることを優先した運営が適当である。
(4)点検関係:ETF等の買入れ
- より効果的で持続的な金融緩和を粘り強く続ける観点から、ETF等買入れの運営を柔軟化すべきである。
- ETF等買入れは、市場が大きく不安定化した場合に、大規模な買入れを行うことが効果的であり、これまで以上にメリハリをつけることで、持続性と機動性を高めることができる。
- ETF等買入れは、必要な際に機動的に対応する方針を明確化することが適切である。
- ETF等買入れは、機動的に行うのが望ましい。
- ETF等買入れの見直しは、より効果的に買入れを実行するためのものであり、金融緩和の後退と誤解されないように注意が必要である。
(5)点検関係:オーバーシュート型コミットメント
- 「点検」の結果として、2%の「物価安定の目標」に向けて、金融緩和は長期化すると考えられる。金融緩和の長期継続を明確にするうえで、「埋め合わせ戦略」としてのオーバーシュート型コミットメントは非常に重要である。
- 今回の「点検」で得た知見を基に、オーバーシュート型コミットメントのもと、金融緩和を忍耐強く続けていくとのメッセージをしっかり伝えることが肝要である。
- 「埋め合わせ戦略」としてのオーバーシュート型コミットメントは、緩和の長期化を意味する。デフレのリスクの方を懸念せざるをえない現状では、出口には容易には向かわないという日本銀行の強いコミットメントを示す役割を担っている。
- 「埋め合わせ戦略」を掲げていれば物価目標が達成されるわけではない。コミットメントを、戦略実現に向けた具体的な行動が伴う形へと修正することが適当である。
(6)点検関係:その他
- 金融緩和の長期化が想定される中、政策の効果と合わせて、時間の経過とともに累積していく金融システムへの副作用もつぶさに評価していく必要がある。このため、金融機構局に対して、金融政策決定会合における定期的な報告を求めることが適当である。
- 金融システムの安定への配慮は、金融機関の収益に配慮するというわけではなく、効果的な金融緩和を機動的に行うためのものである。
- 2%の「物価安定の目標」の必要性やその実現に向けたメカニズム、そのもとでの各種施策の位置付けについて、国民の理解深耕に繋がる情報発信や広報活動が重要である。
(7)その他
- 企業や家計の成長期待・インフレ期待の改善に繋がる企業の変革や、それを支える金融機能の強化を支援すべきである。
3.政府の意見
(1)財務省
- 「点検」の結果やそれを踏まえた政策対応について異論はないので、その方向で進めて頂きたい。
- 今後も、日本銀行と政府が一体となって、日本経済、金融市場の安定のために努力してまいりたい。
(2)内閣府
- 政府は緊急事態宣言の解除を決定したが、今後も感染再拡大を抑える対策に万全を期すとともに、経済的な影響を受ける方々への重点的・効果的な支援策を実行していく。
- 「点検」の結果やこれを踏まえた金融政策運営方法の見直しは、金融緩和政策の持続性や機動性を高めるものと期待しており、対外的に丁寧な説明が重要と考える。
- 日本銀行には、引き続き、政府との緊密な連携をお願いするとともに、適切な金融政策運営を期待する。
[ゴールデン・チャート社]
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■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2021年3月18、19日開催分)(日本銀行)