【2021年10月27日~28日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2021年11月08日 09時37分

金融政策決定会合における主な意見(2021年11月8日)

1.金融経済情勢に関する意見

(1)経済情勢

  • わが国の景気は、内外における新型コロナウイルス感染症の影響から引き続き厳しい状態にあるが、基調としては持ち直している。
  • わが国経済は、当面は感染症の影響や供給制約に下押しされるものの、ペントアップ需要の顕在化に伴い、緩やかに回復していくとみられる。
  • わが国経済は、目先は供給制約等により生産・輸出面での下押し圧力が強まるものの、来年度以降は堅調な設備投資等が見込まれることから従来の回復シナリオが維持されると考える。
  • 感染症への警戒感と供給制約の影響が和らぐ来年前半には、景気の改善が明確となると見込んでいる。ただし、ウィズコロナのもとでサービス消費の持ち直しが順調に進むかどうか不確実性が高いほか、供給制約の影響が拡大・長期化するリスクや海外経済の下振れリスクには留意が必要である。
  • 感染症の新規感染者が急速に減少し、ワクチン接種も進展するもとで、感染症による経済の下振れリスクが低下する一方、早期の経済正常化による上振れリスクを意識する必要がある状況になっている。
  • 9月短観では、企業部門において前向きの循環メカニズムが維持されていることが確認できたが、供給制約の影響が十分に織り込まれていない可能性がある点は割り引いてみる必要がある。
  • 中国における電力の供給制約が長期化することで、同国内の経済や世界のサプライチェーンへの影響が拡大することがないか、注視が必要である。
  • 足もと海外における供給制約や電力不足の影響が顕在化しており、特に中国経済の減速感が強まっている。今後、中国の成長率の下方屈曲が起きないかに注目している。
  • デジタル化と気候変動対応の加速の促進、国内従業者の7割が働く中小企業の生産性向上と賃金上昇の実現が重要である。
  • 金融システムは、全体として安定性を維持しており、先行き感染が再拡大しても、金融仲介機能が大きく低下するリスクは抑制されている。
  • NISAや確定拠出年金の利用促進等により、家計の金融資産を幅広い層の所得向上に活用していくことが重要である。

(2)物価

  • 消費者物価の前年比は、感染症や携帯電話通信料の引き下げの影響がみられる一方、エネルギー価格などは上昇しており、0%程度となっている。先行きは、当面、エネルギー価格の上昇を反映してプラス幅を緩やかに拡大していくと予想される。
  • 経済再開に伴う需給ギャップの改善や予想インフレ率の持ち直し等を踏まえれば、基調的な物価上昇圧力は、わが国でも徐々にではあるが、高まってきている。
  • 企業の予想インフレ率や期待成長率の上方修正に加え、世界的な気候変動対応に向けた動きからエネルギー価格の上昇が続く可能性もあるため、インフレ圧力は従来よりも強まっていると思われる。
  • 10月からの公共料金や食料工業品等の値上げは原油価格等の上昇に伴うものであるが、これによりペントアップ需要の発現時期や強さに影響し得る点には留意が必要である。
  • 輸入原材料の価格上昇の転嫁が消費者物価を押し上げているが、賃金上昇や供給制約による価格上昇圧力は弱い。
  • 消費者物価の前年比はプラスに転じたが、需給ギャップや予想インフレ率の動向を踏まえると「物価安定の目標」の達成は難しい。
  • 日米インフレ率の差は主にサービス価格であり、その大部分は賃金である。賃金引き上げには労働市場が更に引き締まることが必要である。家計・企業の待機資金の支出を後押しするためにも、所得と賃金の引き上げを目指すことが望ましい。

2.金融政策運営に関する意見

  • 引き続き、「3つの柱」による感染症への対応を通じて、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めていくことが重要である。
  • 金融環境は、対面型サービス業など一部の中小企業の資金繰りには厳しさが残っているが、全体として緩和した状態にある。
  • 感染症の資金繰りへの影響は、売上の低迷が続く業種や中小企業に限定されつつある。今後も、企業金融の改善の裾野が拡がっていくか、12月短観等の関連データを点検したい。
  • 基調的なインフレ率が依然として低いわが国では、ペントアップ需要が高まる局面でも、これまでの極めて緩和的な金融政策を粘り強く継続していくことが重要である。
  • 家計の消費意欲や値上げへの許容度が高まっていくためには、賃金上昇への期待の高まり等を通じた将来不安の解消が必要である。企業収益の増加が賃上げに繋がり、所得から支出への前向きの循環メカニズムが強まるよう、現在の金融緩和を粘り強く続けることで経済を下支えしていく必要がある。
  • このところ円安やエネルギー価格上昇に起因する物価上昇がみられるが、現状ではインフレ圧力の強まりが日本全体の経済厚生を低下させる可能性は低く、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」のもとで行っている強力な金融緩和は維持すべきと考える。
  • 交易条件悪化の影響を緩和するためには、景気の改善や予想インフレ率の引上げを通じて、企業が原材料価格の上昇を国内の販売価格に転嫁しやすい経済環境を整える必要がある。
  • 交易条件の悪化への対応としては、金融緩和により需給ギャップを改善させ、価格転嫁が進み易くなる環境とすることが重要である。
  • 足もとの為替円安は、各国の物価上昇率や金融政策スタンスの違いを反映している。為替円安の影響を議論する際には、実体経済や金融市場を通じた様々な波及経路を考慮する必要がある。
  • 為替や資産価格は金融政策を行ううえでの重要な経路だが、それ自体が目標ではないことには留意すべきである。
  • 金融政策運営にあたり、国際商品市況の上昇や為替円安の影響を考えるうえでは、経済全体へのマクロ的なインパクトが重要である。同時に、業種や規模、個々の経済主体によって影響が不均一であることも念頭に置く必要がある。
  • 米欧におけるインフレ率上昇の長期化懸念やそれに伴う長期金利の動向、中国経済を巡るリスクなど様々な不確実性の高まりから、国際金融市場では神経質な地合いが続いている。引き続き、各国の金融政策の舵取りやその影響、市場の反応等を注視していきたい。
  • 金融政策の正常化とは、他国の政策動向にかかわらず、わが国での「物価安定の目標」を安定的に達成することであり、目標に達していないもとでは金融緩和を修正する理由は全くない。この点は、対外的に丁寧に説明すべきである。
  • 金融政策運営では、需給ギャップと予想インフレ率を高めるべく緩和姿勢を強めることで、経済の回復と「物価安定の目標」の達成を早期に実現する必要がある。
  • 社債等の買入れについては、大企業の資金繰りが改善を続けていくもとでは、価格決定メカニズム等の市場機能や年金・生保等の運用に与える影響にも一層の配慮をしていく必要がある。
  • 実体経済への政策効果を評価する観点から、新たな資金需要の掘り起こしと持続的な地域創生への貢献に向けた地域金融機関の体制強化の進捗を注視すべきである。

3.政府の意見

(1)財務省

  • 新内閣では、最大の目標であるデフレ脱却に向けて取り組む。また、総理指示を踏まえ、新たな経済対策を策定し、質の高い予算をつくり上げる。
  • G20では、中央銀行が、物価安定を含む自らのマンデートを果たすために、必要に応じて行動することとされた。
  • 日本銀行には、政府との連携のもと、感染症対応を含め、必要な措置を適切に講じることを期待する。

(2)内閣府

  • 新型コロナの対策の全体像については、11月の早期に取りまとめられるよう具体化を早急に進めている。
  • 引き続き、デフレからの脱却に努める。また、新たな経済対策については、総選挙後、速やかに決定できるよう、政府としてしっかり検討していく。
  • 日本銀行においては、感染症の経済への影響等を十分注視しつつ、引き続き、適切な金融政策運営をお願いする。


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

金融政策決定会合における主な意見(2021年10月27、28日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)