【2025年1月23日~24日】金融政策決定会合における主な意見(要約) 2025年02月03日 13時38分
金融政策決定会合における主な意見(2025年2月3日)
1.金融経済情勢に関する意見
(1)経済情勢
- わが国経済は、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復しており、先行きも、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けるとみられる。
- わが国の景気は緩やかに回復しており、全体としてほぼ想定通りといえる。
- 経済の見通しは、昨年3月時点の想定からみて、オントラックの範囲にある。海外起因の不確実性が多々ある状況も当時と変わりない。これまで各所から入手した情報から、昨年同時期と同じ程度の賃上げの機運の高まりがある。
- 今春の賃上げについては、企業収益・労働市場・物価の状況に加え、年初にかけての経営者の発言、各種調査、支店長会議などのミクロ情報を踏まえると、少なくとも昨年とそれほど遜色ない水準になると予想できる。
- 賃上げを前提として中期経営計画を策定する企業の増加は、賃金は上がらないというゼロ・ノルムからの転換を端的に示している。
- 個人消費が上向き基調になるためには、実質賃金のプラス転化が必要と考える。春季労使交渉での賃金上昇モメンタムの持続と、米や生鮮食品の価格上昇やドル高円安の継続に伴う物価の上振れの行方が現時点の焦点である。
- 円安に伴う様々なコストの増加が家計や企業に及ぼす負の影響は、短期的な為替変動というよりも、中長期的な円安が累積した効果により生じていると考えられる。
- 海外経済は緩やかな成長経路をたどっており、国際金融資本市場は、様々な不確実性は意識されているものの、米国の新政権発足後も、全体として落ち着いている。
- 米国については、実体経済が堅調な中で、ディスインフレのプロセスが続いており、FRBは余裕を持った政策運営が可能な状況にある。
- 米国経済は、減速懸念の契機となった雇用に底入れの可能性が生じ、利下げの一時休止も見込まれており、ソフトランディングより早期の再加速の可能性が高まっている。
- 米国経済はソフトランディング期待が高いが、同国の経済政策動向の不確実性が高い中、インフレの再燃や金利の一段の上昇が生じれば、株価の下落を通じて、同国経済を支える個人消費を下押しする可能性もあり、注意を要する。
(2)物価
- 消費者物価の基調的な上昇率は徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な水準で推移すると考えられる。
- 各種アンケート調査や1月の支店長会議での報告から本年の賃上げがかなり前向きであると感じたほか、今月公表された「生活意識に関するアンケート調査」において家計の中長期的な予想物価上昇率が上昇したことを踏まえると、2%の「物価安定の目標」の実現に向けて基調的なインフレ率は着実に上昇していく蓋然性が高まったと考えられる。
- 業種によって違いはあるものの、労働力不足を受けて需給ギャップが実態的にプラスにあることが、高い物価上昇率が続く背景にある。
- 今後の物価動向については上下双方向のリスクは共にかなり大きいが、概ねバランスしている。アメリカのインフレ再燃と世界的な貿易摩擦の激化が同時に起こり、スタグフレーション型シナリオとなる可能性もある。単に緩和度合いを強くしておけば乗り切れるという状況ではない。
2.金融政策運営に関する意見
- 経済・物価は、これまで示してきた見通しに概ね沿って推移しており、先行き見通しが実現する確度が高まっている。「物価安定の目標」の持続的・安定的な実現という観点から、政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整することが適切である。
- 基調的な物価上昇率は2%の目標に向けて徐々に高まってきている。加えて、現実の消費者物価は、見通しどおりとなった場合、2022年度から4年連続で2%を有意に上回ることになり、コストプッシュとはいえ、経済主体の物価観は累積的に高まっている。 利上げによる影響やそのペースのほか、足もとの経済・物価情勢を考慮すると、今回会合で利上げを行い、政策金利を0.5%とすることが適当であると考える。
- 今回会合での利上げは、市場の平均的な予想と比較してタカ派的でもハト派的でもないという意味で、十分に中立的なタイミングと考える。
- 米国新政権の政策はこれから順次明らかになっていく。その影響の日本への波及は様々に出てくると思うが、ある程度 の下方のストレスを吸収できる程度には、日本経済の頑健性は全体として高まっている。
- 日米の金融政策の方向性が逆のもと、為替市場を中心とした大幅な市場変動を懸念してきたが、米国経済の底入れでFRBの利下げ一時休止が見込まれるため、日本銀行の政策の自由度が増したと認識している。
- 利上げ後も、実質金利は大幅なマイナスであり、経済・物価がオントラックであれば、それに応じて、引き続き利上げをしていくことで、そのマイナス幅を縮小していく必要がある。
- 経済・物価がオントラックで推移する中、インフレ上振れリスクが膨らんでおり、金融緩和度合いを適時・段階的に調整していくことが適当である。
- 新年度に向けた価格転嫁の一段の進展や円安進行で、物価が上振れる可能性もあるほか、不動産も含めた資産価格上昇で投資家の期待も高まっている。今後、過度な緩和継続期待の醸成による円安進行や金融の過熱を避ける観点から、金融緩和度合いの調整を行うことも必要である。
- 日本経済の現状をみると、昨年前半までのような急激な円安の進行は決して望ましいものではない。一方で、円安是正が過度に進むといった逆のリスクにも相応に注意が必要と考える。
- 大・中堅企業の営業利益は改善が続いているが、中小企業は昨年の賃上げ実施後に減益に陥っている。賃上げ余力の観点から、値上げ交渉の結果が業績に反映されるなどにより、中小企業の稼ぐ力が回復しているか、データで確認する必要があるほか、連合の3月集計結果、特に中小企業の賃上げ状況の確認も必要である。また、海外経済の不確実性も引き続き高い。このため、当面は現状の金融政策を維持することが適当である。
- 将来的には、政策金利についての考え方や、基調的な物価上昇率に関する各種指標の位置づけを整理していくことが望ましい。
- 上下双方向のリスクがかなり大きいことを考えると、利上げのペースやターミナル・レートを示唆することには極めて慎重であるべきである。
- 企業や家計の予想物価上昇率は概ね2%程度となっているとみている。今後は、金融政策が影響を及ぼし得る「市場ベースの物価」(家賃や公共サービスを除いた物価)をよく見ながら、物価の上振れリスクに注意していくべき局面にある。
3.政府の意見
(1)財務省
- 政府は、本日、令和7年度予算を国会へ提出する。経済・財政運営に万全を期すべく、本予算の一日も早い成立に向けて取り組んでまいる。
- ご提案の政策金利の変更は、2%の物価安定目標の実現に向けて必要と判断されたものと受け止めており、政策の趣旨の対外的に丁寧な説明を期待する。
- 日本銀行には、政府との緊密な連携のもと、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けた適切な金融政策運営を期待する。
(2)内閣府
- 政府は、成長型経済に確実に移行できるよう政策運営に万全を期す。
- 今回の提案は、物価安定目標を持続的・安定的に実現するために必要と判断されたものと受け止めている。持続的な成長の実現には、金融面から経済をしっかり支えていただく必要があると考える。
- 日本銀行には、引き続き政府と緊密に連携し、十分な意思疎通を図りながら、2%の物価安定目標の持続的・安定的な実現に向けて、適切な金融政策運営を期待する。
以上
[ゴールデン・チャート社]
■関連リンク
経済物価情勢の展望、総裁定例記者会見の要約記事などの一覧はこちら
■参考資料(外部サイト)
金融政策決定会合における主な意見(2025年1月23日、24日開催分)(日本銀行)