【2024年12月18日~19日】総裁定例記者会見(一部抜粋・要約) 2024年12月20日 16時20分

総裁記者会見一部抜粋・要約(2024年12月20日)

1.今回の決定内容と経済・物価動向について

  • 無担保コールレート・オーバーナイト物を0.25%程度で推移するよう促すという金融市場調節方針を維持することを賛成多数で決定した。田村委員は、経済・物価が見通しに沿って推移する中、物価上振れリスクが膨らんでいるとして、政策金利を0.5%程度に引き上げる議案を提出したが、この議案は反対多数で否決された。
  • わが国の景気の現状については、一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復していると判断した。先行きは、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まることから、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
  • 物価について、生鮮食品を除く消費者物価の前年比は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響は減衰してきているが、賃金上昇等を受けたサービス価格の緩やかな上昇が続くもとで、足元は2%台前半となっている。
  • 先行きの消費者物価は、既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方で、基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり、中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想される。展望レポートの見通し期間後半には、物価安定の目標と概ね整合的な水準で推移すると考えている。

2.今後の金融政策運営について

  • 今後の金融政策運営は、先行きの経済・物価・金融情勢次第だが、現在の実質金利がきわめて低い水準にあることを踏まえると、上述したような経済・物価見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和度合いを調整していくことになると考えている
  • そのうえで、金融緩和の度合いを調整するタイミングについては、様々なデータや情報を丹念に点検したうえで、判断していく必要がある。この点、賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど今後の賃金の動向について、もう少し情報が必要と考えている。
  • また、米国をはじめとする海外経済の先行きは引き続き不透明であり、米国の次期政権の経済政策を巡る不確実性も大きい状況が続いていると判断している。

3.金融政策の多角的レビューについて

  • 今回の会合で取りまとめた金融政策の多角的レビューでは、過去25年間のわが国の経済・物価・金融情勢について振り返ったうえで、非伝統的な金融政策運営の効果と副作用を点検し、先行きの金融政策運営の含意を整理した
  • レビューの結果は、当面の金融政策運営に直ちに影響を与えるものではないが、やや長い目でみて、金融政策のあり方を考えるうえで貴重な材料を提供するものになったと考えている
  • 日本銀行は、本レビューの結果も活用しつつ、引き続き2%の物価安定の目標のもとで、その持続的・安定的な実現という観点から、経済・物価・金融情勢に応じて適切に金融政策を運営していく方針である

4.今回経済・物価がオントラックで進んでいく中、利上げを見送った理由について

  • 金融政策運営については、経済・物価の見通しが日銀の見通しが実現していくとすれば、それに応じて引き続き政策金利を引き上げ、緩和度合いを調整していくということが基本的な考え方
  • 指摘のように、最近の経済・物価に関する各種の指標は、概ね見通しに沿って推移しているが、賃金と物価の好循環の強まりを確認するという視点から、来年の春季労使交渉に向けたモメンタムなど、今後の賃金動向について、もう少し情報が必要と考えた
  • また、米国をはじめとする海外経済の先行きも引き続き不透明であり、米国次期政権の経済政策を巡る不確実性は大きいと考えている。これらを踏まえて今回の会合では、金融市場調節方針、現状維持を決定した

5.トランプ次期大統領の経済政策に関する見通しについて

  • まずアメリカ経済そのものについては、昨日パウエル議長も記者会見で指摘していたように、堅調に推移しているとみている。ただ、現時点では繰り返しになるが、次期政権の経済政策を巡る不確実性が大きく、その影響を見極めていく必要もあると考えている。
  • 次期政権の財政政策、通商政策、移民政策等は、米国の経済・物価動向に影響を及ぼす可能性があるだけでなく、世界経済や国際金融資本市場にも大きな影響を及ぼし得ると思う。そうした観点から、わが国の経済・物価に与える影響についてよくみていきたいと考えている。そのうえで、今後これらの点を見極めていくための情報が徐々に明らかになっていくとみている。
  • もとより、金融政策運営については、特定のデータやイベントを待たないと判断ができないというものではない。毎回の会合において、その時点で利用可能な各種のデータや情報を丹念に確認し、適切に判断を行っていきたいと考えている


[ゴールデン・チャート社]

■関連リンク

FED&日銀ウォッチ

主要各国の金融政策スケジュール

■参考資料(外部サイト)

総裁記者会見要旨(2024年12月18日、19日開催分)(日本銀行)

金融政策決定会合の運営(日本銀行)