家計・企業の負担増も=追加利上げ、影響は一長一短―日銀 2025年01月24日 15時27分
日銀の追加利上げで「金利のある世界」が一段と進展し、家計と企業への影響も拡大しそうだ。預金金利の引き上げなどでプラス影響が期待される半面、住宅ローンや企業向け融資の金利が上昇。多額の負債を抱えている場合などは負担が増す可能性もある。
みずほリサーチ&テクノロジーズの試算によると、政策金利が0.5%に引き上げられ、長期金利が1.25%程度に上昇すると、家計全体で年間約6000億円のプラス効果が生じる。預金や株式など金融資産の利回りが改善して収入が増えるためだ。
ただ、住宅ローンなど多額の負債を保有する世帯に限定するとマイナス影響が上回り、1世帯当たり年平均1.5万円の負担増となる。特に資産形成や住宅ローンの返済が途上にある若年層ほど影響が大きく、29歳以下で年平均4.3万円、30~39歳で同3.8万円負担が増える。
昨年7月の前回利上げ決定後、定期預金などの金利とともに、変動型住宅ローンの基準金利を引き上げた銀行も多い。今回の追加利上げを受け、三菱UFJ銀行と三井住友銀行は基準金利の指標となる短期プライムレートを現行の1.625%から1.875%に引き上げると発表。ローン金利は今後さらなる上昇が見込まれる。
また、利上げに伴う金融機関からの借入金利の上昇は、物価高や人手不足で苦しむ中小企業の重しとなる。東京商工リサーチが昨年10月に行った企業アンケートでは、主要取引行から0.3%の金利引き上げを打診された場合、「他行へ調達を打診する」「借り入れを断念する」と回答した中小企業が約58.3%と半数以上に達した。
2024年の企業倒産は1万6件と11年ぶりに1万件の大台を超えており、「金利のある世界」の本格到来で債務削減や価格転嫁が進まない企業の資金繰りが悪化し、「息切れ倒産」が一段と増えることも懸念される。