為替水準の議論せず=米国「トリプル安」懸念で―日米財務相会談 2025年05月22日

 21日行われた加藤勝信財務相とベセント米財務長官の会談は、為替水準の議論に立ち入ることなく終了した。金融市場では、対日貿易赤字の削減を目指すトランプ米政権が円安・ドル高の是正を求めるとの観測がくすぶっていた。だが、ドルが売られれば米国の株や債券も同時に売られる「トリプル安」を招く恐れがあり、足元では強引なドル安誘導には動きにくいのが実情だ。
 「為替の水準については全く議論していない」。加藤氏は会談後の取材でこう語り、為替レートは市場で決定されるべきだという原則を日米で再確認したと説明した。米財務省も声明で「為替水準は議論しなかった」と明記し、「現在のドルの対円相場はファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映したものだ」と強調した。
 トランプ米大統領は円安で自国産業が不利に置かれているとして、たびたび「不公平」などと批判。各国が協調してドル高を是正する「第2プラザ合意」に動くとの臆測も飛び交っていた。
 ただ、4月初旬の相互関税の公表後、市場では米政権の政策への不信感が高まり、トリプル安に見舞われた。さらに、米格付け大手ムーディーズ・レーティングスが5月中旬、米国債を格下げし、「米国資産売り」の圧力は強まっている。
 米財務省によると、米国債の国別保有額(3月時点)は日本が1兆1308億ドル(約162兆円)と最大。会談では「直接、米国債の話は出ていない」(加藤氏)という。ただ、中国が保有額を減らす中、「国債の安定消化のため、米国にとって日本の重要性は増している」(エコノミスト)。市場では「トリプル安を回避するため、(今回の会談では)露骨なドル安誘導を控えたのでは」(大手証券)との見方も広がっている。 

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写真撮影の前に会話する加藤勝信財務相(左)とベセント米財務長官=21日、カナダ・バンフ(AFP時事)
写真撮影の前に会話する加藤勝信財務相(左)とベセント米財務長官=21日、カナダ・バンフ(AFP時事)

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