株価低迷、関税乱発に失望=市場は「米国売り」警告―トランプ政権100日 2025年05月01日

【ニューヨーク時事】金融市場では、高関税政策を乱発するトランプ米大統領に対する失望感が広がり、株価が急落した。米政権は関税を武器に生産拠点の国内回帰を狙うが、世界的な貿易摩擦を引き起こし、市場は米株安・ドル安・国債安の「米国売り」で警告。先行き不透明感が拭えず、雇用拡大につながる企業の投資を阻んでいる。
昨年11月の大統領選でトランプ氏の返り咲きが決まって以降、市場は高揚感に包まれ、金融など幅広い銘柄の買いが膨らんだ。産業界寄りのトランプ氏が規制緩和や減税を推し進め、景気が底上げされるとの期待感が広がったためだ。
第1次政権下の4年間は株価が大きく上がった。「市場が繁栄した」(米地銀大手)という当時の記憶もあり、株価はトランプ氏の2期目就任前から顕著に上昇。ダウ工業株30種平均は昨年12月に史上最高値を塗り替え、終値ベースで初の4万5000ドル台を付けた。
ところが、トランプ氏が繰り出したのは中国のほか、隣国や同盟国とのあつれきを招く高関税政策など悪材料ばかり。4月には株、通貨、債券が同時に売られる「トリプル安」に見舞われ、たじろいだ政権は目玉政策に掲げる相互関税を早々に軌道修正する事態に追い込まれた。金融市場の動揺は収まりつつあるが、政策の不確実性という根源的なリスクは消えておらず、株価の戻りは鈍いままだ。
一方、外国為替市場では円やユーロに対してドルが売られる流れに歯止めがかからない。「将来的に脱ドルを模索する動き」(アナリスト)が意識され、基軸通貨ドルの信認が揺らいでいる。安全資産とされる米国債も売り込まれ、長期金利の週間上昇率は4月、約23年ぶりの大きさとなった。
米国の産業振興を目指すトランプ氏に共鳴し、IT大手アップルは総額5000億ドル(約72兆円)の国内投資を決定。ただ、こうした動きは巨大企業に限られ、産業界は「大型投資には踏み切れない」(日系大手首脳)のが本音だ。
米金融界のご意見番として知られるJPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)は「(日欧など)同盟国との経済的分断は悲惨な結果を生むだろう」と警鐘を鳴らす。脱米国を阻止するためにも、米政権に関税政策の再考を求めている。