岸田首相「賃上げと投資」突破口に=経済対策決定、17兆円台―減税・給付で家計支援 2023年11月02日

 政府は2日の臨時閣議で、物価高に苦しむ家計支援を柱とする総合経済対策を決定した。所得税・住民税の定額減税と低所得者向け給付を含めた経済対策の規模は17兆円台前半程度に上る。岸田文雄首相は記者会見で、「カギを握るのは賃上げと投資だ」と強調。対策を突破口に、コロナ禍から回復途上にある日本経済を成長軌道に乗せると表明した。
 経済対策の名称は「デフレ完全脱却のための対策」で、財源の裏付けとなる2023年度補正予算案の一般会計追加額は13.1兆円。政府は月内にも予算案を国会に提出し、今臨時国会での成立を目指す。
 首相は「来年夏に国民所得の伸びが物価上昇を上回る状態を確実につくりたい」と指摘。早ければ年内に給付を開始するとともに、年明け以降本格化する春闘で賃上げを促進する「二段階」の対応を進める考えを示した。さらに、ボーナス支給時期に合わせ、24年6月から定額減税を行えば「相乗効果を発揮できる」と自信を見せた。
 内閣府は複数年度にわたる経済対策の経済効果について「実質GDP(国内総生産)を19兆円程度押し上げ、消費者物価を1.0%程度引き下げる」と説明した。
 経済対策は(1)物価高対策(2)持続的賃上げや地方の成長実現(3)半導体や宇宙など国内投資促進(4)人口減少対策とデジタル社会への変革(5)国民の安全・安心確保―の5本柱となる。
 物価高対策の目玉として、24年6月に1人当たり所得税3万円と住民税1万円の計4万円を減税するほか、年内にも住民税が課税されない低所得者世帯に7万円を給付する。定額減税総額は3兆円台半ば、給付総額は1.1兆円を見込む。地方自治体の財政運営に配慮し、住民税減税に伴う減収分は全額国費で補填(ほてん)する。
 このほか、ガソリンなど燃料油価格の高騰対策は24年4月末まで延長。電気・ガス代の価格抑制策も現在の措置を同年4月末まで続ける。半導体の国内拠点増強や、宇宙航空研究開発機構(JAXA)への1兆円規模の基金創設など、投資支援策も盛り込んだ。 

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記者会見する岸田文雄首相=2日午後、首相官邸
記者会見する岸田文雄首相=2日午後、首相官邸
臨時閣議に臨む岸田文雄首相(左から2人目)。右端は新藤義孝経済再生担当相=2日午後、首相官邸
臨時閣議に臨む岸田文雄首相(左から2人目)。右端は新藤義孝経済再生担当相=2日午後、首相官邸

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