「税収増を還元」に黄信号?=足元は大幅減収―経済対策 2023年10月04日

 政府が月内にまとめる経済対策は「税収増の国民への還元」をうたい、物価高対応や企業減税の強化が柱となる。その税収は、過去最高を更新した前年度に比べて現時点で大幅に落ち込んでいる。一方、与党は所得税減税への期待の声も出始めており、調整は難航しそうだ。
 岸田文雄首相は経済対策の目的について、「成長の成果である税収増を国民に適切に還元する」と強調した。経済対策には電気・ガス代の負担軽減策のほか、賃上げに積極的な企業の税優遇強化や半導体などの国内生産拡大のための減税制度の創設を盛り込む方針だ。
 2022年度の一般会計税収は71兆1374億円と3年連続で過去最高を更新。物価高で消費税収が伸びたほか、所得税収は賃上げ、法人税収は企業業績の回復により、それぞれ増加した。
 23年度の税収見込みは69兆4400億円。22年度実績より1兆7000億円程度低く見積もったが、財務省が2日発表した8月末時点の税収累計実績は前年同月末比12.1%減の14兆2185億円と落ち込んだ。法人税の計算方法が変わり、企業が納めた税金を払い戻す還付金が増えたことが響いた。
 過去の経済対策では、税収が当初の見込みから上振れした分を財源の一部に充ててきたケースが多いが、今年度はどこまで当てにできるか見通しにくい。一方、自民党内からは「税収増をダイレクトに、減税措置により国民や企業に還元することもあり得る」(茂木敏充幹事長)、「法人税と所得税の減税も対象になってくる」(世耕弘成参院幹事長)などと、政府に国民への「直接還元」を促す発言が相次ぐ。
 これに対し、野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「歳出が歳入を大幅に上回る中、税収が上振れたからといって減税措置は正当化されない」と指摘する。借金返済を後回しにして減税の手を広げることに否定的で、「財政赤字の穴埋めに使うべきだ」と訴えている。 

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