金融庁に「事前調整」報告=企業保険カルテルの疑い―大手損保 2023年09月29日

 大手損害保険会社が企業向け保険の入札前に価格調整していた問題で、東京海上日動火災保険など4社は29日、金融庁に社内調査の報告書を提出した。独禁法違反のカルテルが指摘される行為を含め、顧客企業100社超との取引で不正が疑われている。同庁は実態解明に向け、立ち入り検査も視野に報告書を精査。問題が確認されれば、業務改善命令などの行政処分を検討する。
 報告書を提出したのは東京海上日動のほか、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険。金融庁は8月、4社に保険業法に基づく報告徴求命令を出していた。
 価格調整の疑いは東急グループ、ENEOS、JR東日本などの民間企業のほか、東京都や警察庁といった官公庁との契約でも浮上している。業界で横行していたが、「事例はさまざまで、すべて悪質性のあるケースかどうかは確認する必要がある」(金融庁関係者)との声もある。
 価格調整が行われたのは、損保が保険金支払いのリスクを分散する「共同保険」。主に、石油元売り会社や鉄道会社といった大規模施設を管理する大企業と契約する。入札で保険料を決めるケースもあり、その際、保険料が下がりすぎないよう各社が事前に情報交換していた。近年は自然災害が頻発し、「保険料を抑えるのが難しい」(大手損保)ことも事前調整につながったとみられる。
 金融庁は、各社の営業担当者が不適切だと認識していたかや、上司の指示があったかなどについて調査を進める。各社の経営管理体制も焦点。鈴木俊一金融相は今月29日の閣議後記者会見で「実態解明や真因分析を進める」と強調した。公正取引委員会も独禁法違反(不当な取引制限)の疑いで調査に乗り出している。 

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