中国禁輸、輸出に打撃=水産業への支援急務―処理水放出1カ月 2023年09月23日

 東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出が始まってから24日で1カ月となる。放出に反発する中国は即座に日本産水産物の全面輸入停止に踏み切り、中国向けの食品輸出では打撃が表面化し始めた。政府は海外販路の開拓や国内加工体制の強化などの水産業支援策をまとめたが、迅速な実行が求められている。
 8月の貿易統計速報(通関ベース)によると、中国への食料品輸出額は前年同月比41.2%減の142億円に急減した。中国が輸入の全面停止を発表したのは処理水放出が始まった8月24日で、禁輸の影響が本格的に出てくるのは9月以降だ。農林水産物・食品の輸出相手国・地域でトップだった中国の対抗措置で、順調に拡大してきた食品輸出に急ブレーキがかかるのは避けられそうにない。
 政府は今月初め、水産物輸出の中国依存から脱却するための支援策をまとめた。予備費207億円の支出を新たに決め、計800億円の既存基金と合わせ、処理水放出に伴う水産業支援の総額を1007億円に拡大した。
 特にホタテ貝は、輸出額の5割超を中国向けが占めていただけに影響が大きい。中国でむき身に加工された後で米国に輸出されるケースが多かったことを踏まえ、国内で殻むき機を導入する経費の3分の2を補助する。日本から米国へ直接輸出できるように支援する狙いだ。
 宮下一郎農林水産相は22日の記者会見で「支援が早急に行き渡るよう対応を急ぎたい」と語った。基金を活用した水産物の買い取り・保管事業では、4日に第1号の補助事業を採択した。
 水産庁が福島県沖でヒラメなどを継続的に採取し行っている調査では、処理水に含まれる放射性物質トリチウムは検出されていない。
 政府は中国に対し、科学的な根拠に基づかない禁輸措置の即時撤廃を引き続き求めていく方針だが、中国が応じる見通しは立っていない。宮下氏は15日の就任インタビューで「世界貿易機関(WTO)の枠組みの中で何が最も効果的かという観点から、さまざまな選択肢について検討を進めていきたい」と強調している。 

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