トリチウムの海洋放出、海外でも=処理水、安全性の説明継続―政府 2023年08月11日

 東京電力福島第1原発にたまる処理水について、政府は8月下旬にも海への放出を開始する方向だ。処理水に含まれる放射性物質トリチウムは、世界各地の原発でも運転に伴って大量に発生し、各国の規制に従い海洋などに放出されている。政府は、科学的な安全性について国内外に丁寧な説明を続け、漁業関係者や国際社会の理解を得ようとしている。
 東電の計画では、トリチウム濃度を国の規制基準の40分の1未満に薄めて放出する。国際原子力機関(IAEA)は7月、放出は「国際的な安全基準に合致している」として、お墨付きを与える包括報告書を岸田文雄首相に提出した。
 ただ政府は福島県漁業協同組合連合会に対し、2015年に「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束しており、放出前に理解を得ることは不可欠だ。
 漁業支援や風評対策で計800億円の基金を設置しており、放出前でも必要に応じて活用する考え。また、各国の在日大使館向けに説明会を開くなど、海外への情報発信にも腐心している。
 東電は、福島第1のトリチウム放出量を年間22兆ベクレル未満に抑える計画だ。経済産業省によると、海外では、韓国の月城原発が71兆ベクレル(21年)、中国の秦山第3原発は143兆ベクレル(20年)をそれぞれ排出。フランスのラ・アーグ核燃料再処理施設は、21年に1京ベクレルと桁違いの量を排出した。中国は日本の放出計画を強く批判しているが、政府は諸外国に冷静な対応を呼び掛けている。 

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