防衛財源捻出、残高膨張の恐れ=国債償還ルール見直し、議論スタート―自民 2023年01月19日

 防衛費増額の財源を議論する自民党の特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)は19日、増税以外の財源の上積みを目指し、国債の「60年償還ルール」の緩和や廃止の議論を始めた。しかし、償還ルールの見直しは財政規律が緩み、国債残高の膨張につながる恐れもある。
 60年償還ルールは、国の借金である赤字国債や建設国債を一部借り換えながら60年間で完済する仕組み。例えば600億円の国債を全て償還期限10年の国債で発行した場合、借換債を活用しながら、10年ごとに100億円ずつ6回償還する。緩和や廃止により借り換えを増やせば、毎年度の国債償還に充てる予算を減らし、その分防衛費に回すことができる。
 萩生田政調会長は「(償還期間)60年を80年に延ばせば、(防衛費増額に必要な)年間4兆円を生み出すことができる」と主張している。一方、財務省幹部は「普通国債が借換債に置き換わるだけで、償還財源を防衛費に回せば、結果として国債発行残高は増える」と償還ルールの見直しには消極的だ。
 防衛費増額に伴い、2027年度以降、毎年度約4兆円の財源が必要となる。政府はこのうち1兆円強を増税で確保し、残る約3兆円は歳出改革の徹底や決算剰余金などで賄う方針だ。しかし、自民党内には「増税は避け、国債で賄うべきだ」との声が根強い。
 国債発行残高は23年度末に1068兆円に増加する見込みで、膨張に歯止めがかからない。さらに日銀は昨年12月、大規模な金融緩和策の一部を修正し、事実上の利上げに踏み込んだ。金利の水準が上昇すれば国債の利払い負担が膨らみ、財政悪化が加速するのは必至だ。 

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