防災DX、自治体で加速=民間ノウハウ活用で効率化―職員の負担軽減も 2022年12月29日

 集中豪雨や台風による災害が激甚化する中、人工知能(AI)などの最新技術を活用して防災のデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める自治体が増えている。気象情報の迅速な把握によって防災情報を的確に発信し、住民の安全確保につなげるのが狙いだ。防災対応に当たる職員の負担軽減への期待もある。
 国土交通省は今年度、5市町や損害保険会社などと共同で、電柱や水路脇などに小型のセンサーを設置し浸水を検知する実証実験を行った。そのうちの一つ、愛知県岡崎市では、過去に浸水被害のあった市街地などにセンサーを39個設置。ほぼ正確に水位の上昇を検知した。市の担当者は「職員が現場に行かなくても状況が把握できると確認できた」と話す。
 自治体独自の動きも広まりつつある。東京都板橋区は今年度、民間の気象情報会社から水害時の気象情報や区内の河川情報などの提供を受け始めた。区専用ホームページで、観測データや区内の災害危険度などが確認できる。担当者は「防災が専門でない職員の災害対応力向上にもつながる」とメリットを語る。
 住民の安全確保でDXを模索するのは大阪府豊中市。今年2月、無料通信アプリ「LINE」上のチャットボットに避難時に支援が必要な人の安否情報を入力し、集計する作業を確認した。この機能は、国の研究機関と民間企業が共同で開発。神奈川県内の自治体では、入力された情報をAIが分析し、住民が取るべき行動を提案する「避難支援機能」も試行した。
 自治体が防災DXに取り組むのは、頻発する災害への対応力向上が目的。限られた職員で災害対応に当たる必要があることも大きな要因だ。チャットボット開発に参加した民間気象会社ウェザーニューズ(千葉市)気象予報士の宇野沢達也さんは防災DXのメリットとして、行政と住民が情報を瞬時にやりとりできる点を強調。「『気象情報』は『防災情報』だ」と語る。
 自治体では、災害の状況把握を担当する職員と、住民に避難を呼び掛ける職員が異なるため、的確な情報発信に支障が生じかねないケースもある。宇野沢さんは「防災DXは担当間の情報ギャップを埋める手段にもなる」として、活用を呼び掛ける。 

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