CO2に課金、28年度導入=企業配慮で先送り、排出削減に不安 2022年12月22日

 政府は22日、企業の二酸化炭素(CO2)排出に金銭負担を課す「カーボンプライシング(CP)」の本格導入を2028年度とする方針を決めた。企業の負担に配慮して5年以上の準備期間を設け、対象も絞っており、排出削減が遅れる懸念が伴う。
 政府のCPは、CO2排出量に応じて企業から徴収する賦課金と、企業間で排出量を売買する「排出量取引」の段階的導入の組み合わせ。賦課金は28年度からで、石油元売り会社など化石燃料の輸入事業者に対象を絞る。排出量取引では、電力会社に排出枠を有償で買い取らせる仕組みの導入を33年度まで先送りする。
 政府は、温室効果ガス排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目標の50年までに達成するには、今後10年間に官民で計150兆円超の脱炭素投資が必要と試算。CP収入を償還財源とする「GX経済移行債」(仮称)を10年間で20兆円規模発行し、調達資金を先行投資の支援に充てる。初年度となる23年度の発行額は、22年度第2次補正予算で計上したGX関連支出約1.1兆円の財源振り替えを含め、約1.6兆円とする。
 CPを巡っては、英仏などが排出量に課税する炭素税を既に導入。排出量取引も欧州連合(EU)は05年に開始し、電力会社にも排出枠購入を義務付けている。これに対し日本は、産業界が反対する炭素税を見送り、導入が容易な賦課金方式を採用した。
 西村康稔経済産業相は22日の記者会見で、CPについて「当初は低い負担で導入し、徐々に引き上げていく。(脱炭素に)先行して取り組む企業ほど負担が低くなる」と述べたが、狙い通り先行投資を引き出せるかは見通せない。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「早期に企業に負担を課し、対象企業も広げなければ、50年の目標達成は難しくなる」と指摘する。 

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