原発活用、課題山積=「見切り発車」の政策転換 2022年12月22日

 政府は22日、原発を最大限活用する方針を決めた。電力の安定供給確保と脱炭素化の推進に向け、東京電力福島第1原発事故後の原発政策を大きく転換した。ただ、安全性の確保に加え、放射性廃棄物の処理など課題も山積したまま。「見切り発車」の側面は否めない。
 原発事故後、政府は規制基準を厳格化。現在までに再稼働した原発は、申請した27基中10基にとどまる。このため「国が前面に立った対応」で地元同意を確保するなどし、来夏以降に追加で7基の再稼働を目指すとしている。
 また、「原則40年、最長60年」の運転ルールも見直す。現行では、建設中を含む全36基が60年間運転した場合、2060年時点で稼働する原発は8基のみ。「60年超」運転を可能とし、当面の電力供給力を確保するとともに、30年代には安全性を高めた「革新軽水炉」による建て替えも想定する。
 潮目が変わったのは、ロシアのウクライナ侵攻をきっかけとしたエネルギー危機だ。原発再稼働の遅れや老朽火力の休廃止で、今冬も電力不足への不安が拭えない。発電用の液化天然ガス(LNG)の供給が途絶する恐れもある。原発に対する不信感は根強いが、政府は「追い風が吹いた」(経済産業省幹部)として原発活用に突き進んだ。
 ただ、原発の長期運転には安全性確保に課題を残す。今回、運転期間から除外される停止期間中は、放射線による原子炉損傷がほぼないとされるが、コンクリートなどの経年劣化は着実に進む。原発産業の技術や人材、サプライチェーン(供給網)の先細りなども懸念材料だ。
 さらに、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」の実現も見通しが立たないまま。再処理工場の建設は遅れ、高レベル放射性廃棄物の最終処分場も決まっていない。 

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