生活基盤「変容」に250万円=原発事故賠償の新基準―政府審査会 2022年12月20日

 東京電力福島第1原発事故を巡り、文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会(会長・内田貴東大名誉教授)は20日、国の賠償基準である「中間指針」の見直しを決めた。「生活基盤の変容による精神的損害」に対し1人250万円の慰謝料を支払うことなどが柱。賠償範囲の拡大により、東電は被災者に5000億円規模で追加支払いを行う見通しだ。
 中間指針見直しを受け、永岡桂子文科相は省内で東京電力ホールディングスの小早川智明社長と面会。「中間指針で賠償対象と明記されていない損害も直ちに対象外とすることなく、被害者からの賠償請求を真摯(しんし)に受け止めてほしい」と述べ、個別事情に応じた柔軟な対応を東電に求めた。
 指針は2011年8月に策定され、見直しは13年12月以来。避難生活による精神的損害として東電が1人月額10万円を目安に慰謝料を支払ってきた。ただ、最高裁で今年3月、中間指針を上回る額の賠償を東電に命じる7件の判決が確定したため、見直し作業を進めていた。
 新たな基準では、居住制限区域と避難指示解除準備区域の住民を対象に、長年住み慣れた故郷が事故で「変容」してしまったことによる精神的損害を認めた。既に帰還困難区域の住民には、生活基盤を「喪失」した精神的損害として、1人700万円の慰謝料を支払っていた。 

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廃炉作業が続く東京電力福島第1原発の3号機=11月7日、福島県大熊町
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