サハリン2、権益なお不透明=政府支援も「条件」見えず―LNG調達、不安定化の恐れ 2022年07月20日

 ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」をめぐり、日本政府は大手商社が権益を維持できるよう支援する方針を打ち出した。しかし、ロシア政府が権益維持に課す条件などは明らかになっておらず、先行きはなお不透明。液化天然ガス(LNG)の重要な調達先であるサハリン2からの供給が途絶えれば、都市ガスや火力発電の原燃料であるLNGの調達が長期にわたり不安定化しかねない。
 サハリン2には、ロシア国営ガスプロムが約50%出資するほか、三井物産が12.5%、三菱商事も10%出資する。LNG生産量は年1000万トンで、このうち約6割が日本向け。日本はLNGの8.8%をロシアに依存しており、その9割がサハリン2から賄っている。
 ロシアのプーチン大統領は6月末、サハリン2の事業をロシア側が設立する新会社に移管する大統領令に署名した。日本が権益を維持するためには、三井物産と三菱商事が新会社の設立後1カ月以内に出資の意向を通知し、ロシア側から承認を得る必要がある。
 岸田文雄首相と萩生田光一経済産業相は今月15日に会談し、サハリン2について「わが国の権益が損なわれることがあってはならない」との認識で一致。今後、商社2社が新会社に株主として参画できるように後押しする。萩生田氏は19日の記者会見で「企業が単独で判断するのではなく、しっかりとサポートしていきたい」と強調した。
 もっとも、政府が支援したからといって権益を維持できるかは分からない。政府はロシア側に大統領令の詳細を照会しているが、新会社への出資条件などはいまだ不明。米欧と足並みをそろえ対ロ制裁を続ける日本への対抗策として、ロシアが厳しい条件を突き付けたり、日本企業の参画を拒んだりする恐れがある。
 日本側関係者は「刺激して変な条件を付けられたら大変だ」と警戒する。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「政府が全面的に支援しても、(対ロ制裁に加わっている現状では)ロシア政府ときちんとした話し合いができるとは思わない」と指摘。日本エネルギー経済研究所の橋本裕研究主幹は「権益を維持できるかどうかは半々だ」との見方を示した。 

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