通信障害、対策へ官民連携カギ=浸透する「つながる社会」―IoT、車から小売りまで 2022年07月15日

 あらゆる機器をネットワークでつなぎ、情報をやりとりするIoT(モノのインターネット)技術が社会のさまざまな分野に浸透している。用途は自動車や家電から小売り分野にまで拡大。それだけに、今月発生したKDDIの大規模通信障害では混乱が多方面に広がり、「IoT社会」の弱点を浮き彫りにした。通信インフラの障害対策が急務となるが、そのためには官民の連携が不可欠だ。
 調査会社のIDCジャパン(東京)によると、2021年の国内のIoT市場の規模は5兆8948億円(見込み)。工場などでの利用に加え消費者向けの市場も拡大し、26年には9兆1181億円に達すると予想している。
 自動車各社が力を入れるのが、通信機能を備えた「コネクテッドカー(つながる車)」。乗車前に遠隔でエアコンを操作したり、事故時に自動で緊急通報を行ったりする機能が売り物だ。走行データを分析し、安全運転の度合いに応じて保険料を割り引く自動車保険も登場した。
 人手不足に悩む小売業界は、IoTによる店舗の省力化に取り組んでいる。コンビニエンスストアのファミリーマートは無人レジの店舗を首都圏に6店舗展開。天井のカメラや陳列棚の重量センサーを通信で結び、顧客が手に取った商品を認識する仕組みだ。
 スーパーなどを展開するトライアルカンパニー(福岡市)は、一部店舗でバーコード読み取り機を搭載した買い物カートを導入。買い物客が商品のバーコードを読み取ると、退店時にプリペイドカードで自動精算してくれる。陳列棚の欠品を自動感知するシステムも取り入れた。
 バス停で車両の運行状況を表示する機能など、交通機関でもIoTが使われている。冷蔵庫やエアコンといった家電も、外出先からスマートフォンで中身の確認や操作が可能な機種が人気だ。
 KDDIの今回の障害は、こうしたIoT機器向けの150万回線にも波及。自動車業界では、トヨタ自動車、マツダ、スズキ、SUBARUでつながる車の一部サービスが使えなくなった。
 今後は、大量のデータ処理が必要な自動運転の普及が本格化し、車両と通信の連携がさらに進む。だが、「きちんとした通信インフラをつくらなければ自動運転は成立しない」(業界関係者)。トヨタは「自社だけでは対処できない。官民が協力して議論する課題だ」(広報)と訴える。 

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2日、KDDI通信障害のニュースを伝える東京・渋谷の街頭ビジョン
2日、KDDI通信障害のニュースを伝える東京・渋谷の街頭ビジョン

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