物価高対策、2次補正も視野=問われる財政運営―岸田政権【22参院選】 2022年07月11日

 岸田政権は参院選で大勝したが、経済政策で難しいかじ取りを迫られる。喫緊の課題は、ロシアのウクライナ侵攻に伴うエネルギー価格高騰や円安を背景に進む物価高への対応。物価高は個人消費や企業収益に悪影響を及ぼし、コロナ禍から回復してきた景気を下振れさせかねない。政府は5.5兆円の予備費を活用し当面の物価高に対応、年内の2022年度第2次補正予算案編成も視野に入れる。
 ◇値上げの秋に備え
 銃撃され死亡した安倍晋三元首相の経済政策「アベノミクス」を支持する自民党若手議員らは、国の直接の財政支出である「真水」で「50兆円規模」の補正予算を求める方針。岸田文雄首相は11日の記者会見で「必要に応じて、適切なタイミングで次の経済対策も考えていく」と述べた。
 家計を直撃する食品の値上げラッシュは今後も続く。政府は、10月以降に輸入小麦を民間に売り渡す価格の高騰抑制策を検討、パンや麺類のさらなる値上がりを抑えたい考え。ガソリンなど燃料価格の抑制策として石油元売り会社に支給している補助金では、予算措置が終わる10月以降の扱いが焦点だ。
 ◇歳出拡大圧力
 看板政策「新しい資本主義」の実現も課題だ。政府は6月に閣議決定した「新しい資本主義」の実行計画で、「人」「科学技術」「スタートアップ」「脱炭素・デジタル」の4分野に重点投資し、経済を新たな成長軌道に乗せる戦略を描く。
 脱炭素分野では、新たな国債「GX経済移行債」(仮称)で20兆円規模の資金を確保する方針。自民党は参院選で、防衛費や少子化対策・子育て支援でも予算の増額を掲げた。年末の23年度予算案編成に向け歳出拡大圧力が強まるのは必至。財政出動と財政健全化のバランスをどう取るか、岸田政権のスタンスが問われる。
 ◇探る原発再稼働
 エネルギー確保も難問だ。ロシアは、日本の商社も出資する石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を事実上接収する動きを見せる。液化天然ガス(LNG)の代替調達は急務だ。
 電力不足への対応では、老朽化した火力発電所の運転再開で夏場を乗り切れたとしても、今冬の電力需給は一段と厳しくなる見通し。首相は「供給力の確保に向けて最大限、原子力を活用していく」として原発再稼働に前向きだが、国民的議論は不足している。 

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