米利上げ、続く円安圧力=貿易赤字拡大、企業に危機感 2022年06月16日

 米連邦準備制度理事会(FRB)が0.75%の利上げに踏み切った。大規模金融緩和を続ける日本と米国の金利差は一段と広がり、円安・ドル高が加速する可能性がある。日本の財務省が16日発表した5月の貿易統計で、貿易赤字は歴史的水準に拡大。産業界では危機感が高まっている。
 16日の東京外国為替市場は、米利上げ幅が市場の予想通りだったため、前日までの急速な円安進行はいったん落ち着きを見せた。パウエルFRB議長は今回の大幅利上げについて「異例の大きさ」と発言。今後、利上げ幅縮小を探る構えだ。ただ、FRBはこれまでも予想外のインフレ高進に対応し、大幅な利上げを迫られてきただけに先行きは不透明だ。
 コロナ禍で打撃を受けた観光業界にとって、円安は訪日外国人客の回復に弾みをつける「追い風」(旅行大手)となり、大手百貨店も「訪日客の買い物意欲が高まってプラス要因となるのは間違いない」と期待する。しかし、原材料を海外から輸入する食品メーカーなどは「価格高騰で負担が大きくなる中、さらに厳しい状況を強いられる」(J―オイルミルズ)と懸念する。
 ロシアによるウクライナ侵攻の影響に伴う供給不安で、資源や原材料の価格上昇が続く状況では、円安の恩恵を受けやすい輸出産業からも「(部品調達などで)円安のデメリットが拡大している」(日本自動車工業会の永塚誠一副会長)との声が上がる。海運業界はドル建ての運賃収入の増加が見込めるものの、「急速な円安で日本の景気が落ち込めば荷動きが減る。中長期的には懸念の方が大きい」(関係者)と不安の声が漏れる。
 5月の貿易統計で、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支の赤字額は、資源価格の高騰や円安で過去2番目の大きさとなった。これは所得の大幅な海外流出を意味し、国内景気の下押し材料になりかねない。日銀は米国などに追随して拙速に利上げすれば景気回復を阻害しかねないとして、16、17両日の金融政策決定会合で大規模金融緩和を継続する見通しだ。
 円安は日本経済の弱さがもたらしたとの見方もあり、経団連の十倉雅和会長は16日、記者団に「日本の経済や産業を強くするしかない」と強調した。 

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